次の日の午前中、C部長はB課長に改めて9月末までにメンバー全員に5日間の有休を取得させるように言った。そして「これは労働基準法の決まりなので、絶対に達成してほしい」と付け加えた。しかしB課長は頭をかきながら答えた。

「いやーっ……。部下には事あるごとに『有休を取るように』って話しているんですけどねーっ。なかなか取ろうとしないんですよ。みんな仕事熱心なんです」

 C部長の指示にもかかわらず、9月になっても設計1課の事態は改善されなかった。相変わらずB課長は営業部に顔を出しては、彼らが取ってきた仕事の案件を「ウチがやりますよ」と引き受けまくり、メンバーに割り当てていたからだ。そして事あるごとに

「あの件はどうなった?」
「○○の案件だけど、もうすぐ納期だけどまだ済まないの?」

 などとメンバーの尻をひんぱんに叩くので、皆のひんしゅくを買っていた。結局誰も有休を取ることなく、9月の中旬に突入したところで大変な事態が起きた。

1人減ったのに、案件の量はそのまま

 Aの1年後輩のメンバーが、激務を理由に突然会社を辞めたのだ。しかしすぐに代替要員が見つかるはずはない。これだけ厳しい状況にもかかわらず、B課長の態度は変わらない。実は、2年前から設計部長の席が空いており、誰もB課長に仕事のやり方を注意、助言する人間がいなかったという事情もあった。暴走するB課長に、ついに皆の怒りが頂点に達した。

 Aはメンバー代表として、B課長に訴えた。

「仕事が多すぎて有休を取るどころではない。メンバーが1人減ったのだから、自分の部署でする必要がない仕事まで持ってこないでほしい」

 しかしB課長は聞く耳を持たず、

「何を言ってるんだ。この仕事はウチでするべきだから、引き受けているんだろう!」

 と逆ギレしたのだ。