有休を取らせないと、労働基準法違反で1人30万円以下の罰金

「設計1課のメンバーは、課長と部下が6名ですね。改めて伺いますが、この中で9月30日までに年5日の有休を取得する義務がある社員は何名ですか?」

 C部長は社員の有休管理簿を見ながら確認した。

「ええと……B課長は今年度有休を10日取得していますね。あと10月1日入社のメンバーが2名いますが、有休の付与日が4月1日なので合計3名が対象外。残りの4名は4月1日入社なので10月1日に有休が付与される。となると、この4名が今回の対象者ですね」

 C部長は、設計1課の社員全員に有休を与えないといけないと考えていたので、少し気が楽になった。そして最も気になることを尋ねた。

「もし、この4名が9月30日までにそれぞれ5日間の有休を取得しなかった場合、労働基準法違反になりますよね?」
「会社が年5日の有休を取得させなかった場合、対象の労働者1名ごとに30万円以下の罰金に科されることになります」(労働基準法第120条)
「するとメンバー4人分で120万円の罰金!そんなの払えないよ。どうしよう……」
「落ち着いてください。10月1日の時点で5日間の有休を付与していなくても、直ちに罰金が科されるわけではありません。確かに法律上は9月中に全部有休付与する義務がありますが、どうしても無理であれば10月にずれ込む場合もあるでしょう。今回は極力早期に対処することとし、これからは違反することがないように社員への計画的な有休の取得を進めて下さい」
「繰り返しますが、違反について労働基準監督署から指摘を受けた場合、いきなり罰せられることはないのですね?」
「労働基準監督署は、原則、まず是正に向けての指導から入ります。その段階で改善策を提示し、以後は遵守してもらえば大丈夫ですよ」