歴代韓国政権が誇張した
北朝鮮の「非核化意思」

 北朝鮮にとって核開発を行うこと自体が、政権を守ることであり、これを絶対に放棄しないであろうことは、当然推定された。

 1990年代中盤に、100万人ともいわれる北朝鮮の住民に食料難で餓死者を出した時も、貴重な外貨を使って、核兵器の開発を続けてきた。そこには核開発を諦める意思はみじんも感じられない。

 しかし、歴代の韓国政権、特に革新政権は、北朝鮮が核を放棄するかのように主張し、国民をだまし続けた。北朝鮮の非核化を進展させたとして、政治的な成果としたのである。

 最後の軍人出身であるが、共産主義国との関係改善を図る「北方外交」を進めた盧泰愚(ノ・テウ)大統領は、金日成主席と南北非核化宣言に合意した。同大統領は「核の恐怖がない朝鮮半島を実現する夢に向け大きく前進した」と語った。これを受け韓国国内にあった米国の戦術核は撤収したが、その後も北朝鮮は核開発を続けた。

 金大中(キム・デジュン)大統領は、金正日総書記と南北首脳会談後「北朝鮮は核開発を行ったことも、その能力もない、私が責任を取る」と述べた。金大中大統領は、最初の南北首脳会談を行い、ノーベル平和賞を受賞した。

 盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は2004年、「北朝鮮は必ず核を放棄するだろう」「核実験に関する何の兆候もない」と述べたが、2006年10月に北朝鮮は最初の核実験を行った。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、北朝鮮が4回目の核実験を行いICBMまで発射した際にも金正恩国務委員長を擁護した。「金正恩氏の非核化の意思は明確だ」と述べ、トランプ大統領を米中首脳会談に引っ張り出した。

北朝鮮の平和攻勢に
隠された意図

 北朝鮮は、自分たちの都合で平和攻勢を仕掛けたり、強硬姿勢に出たりする。北朝鮮が融和的な姿勢に出ている時には何か意図が隠されていることを疑わざるを得ない。

 2018年に、金正恩氏は妹の金与正氏を韓国に派遣し、突然平昌オリンピックに参加するなど平和攻勢を仕掛けてきた。しかし、それは厳しい制裁による困難な状況を打開し、核武力を高度化するための時間を稼ぐのが目的であった。