北朝鮮の核・ミサイル挑発は
一触即発の危機に発展するか

 北朝鮮が非核化を拒否する中、緊張が高まっている。当面最大の危険は北朝鮮による7回目の核実験である。7回目の核実験がどのようなものになるか、メガトン級の核実験となるのか、戦術核に対応した小型の核弾頭の核実験となるか金正恩氏の考えは読み切れていない。

 しかし、日米韓の安保担当の高官レベル協議で、7回目の核実験が行われる場合には、6回目までとは別次元の強い対応となると予告している。核実験の内容、日米韓の対応いかんでは緊張が急激に高まる可能性も排除できない。

 韓国内では、北朝鮮の戦術核使用を想定した訓練の強化を求める声が高まっている。現在の米韓合同演習は北朝鮮による通常兵器による攻撃を想定しているが、それでは北朝鮮の核には対応できない。

 米国の戦略資産(兵器)展開を含む米韓の拡張抑止、NATO式の核共有(注)、さらには韓国独自の核武装を求める声が出てきている。

(注)自国の核兵器を持たない加盟国が計画的に関与すること。特に、核兵器が使用される場合、その国の軍隊が核兵器の運搬に関与すること。参加国は核兵器政策に関する協議と共通の決定を行い、核兵器使用に必要な技術設備(特に核搭載航空機)を維持し、核兵器を自国の領土に保管する

 中央日報によれば、米国の対北朝鮮政策転換の可能性を懸念する声も出ている。エバンズ・リビア元首席国務次官補代理(東アジア・太平洋担当)は9日、米政府系放送のボイス・オブ・アメリカで「今後米国の対北朝鮮政策が『非核化』から『核危機管理』に方向が向かう」と発言した。同氏は「韓国と他の国の当局者が、核武装した北朝鮮の現実とその脅威の管理に関する話を始めると考える」と述べている。

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 北朝鮮の「核武力政策法」は日本の安全を脅かしかねない動きである。北朝鮮は、「非核国でも他の核兵器保有国と野合し侵略や攻撃行為に加担した場合、核兵器を使用できる」としており、韓国ばかりでなく日本も核攻撃の対象となることを明確にしている。

 日本では昨年、政府・与党が相手国のミサイル発射拠点などを自衛のために先制攻撃する「敵基地攻撃能力」の保有に向けた本格的な議論に入ったとの報道があった。北朝鮮の「核武力政策法」を見れば、日本も「敵基地攻撃能力」についての検討を急ぐ必要があろう。

 同時に韓国との関係についても、現在は歴史問題で首脳レベルの対話がない状況であるが、日韓の安保協力が現在の日本の国益であることを再認識すべきであろう。北朝鮮の核問題は、日本の国益が何かを再度考える機会となろう。

(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)