一方で、アメーバ経営が年次経営計画や月次予定を必達としている点については、社員が高い目標を目指さずに守りに入ってしまう弊害を生みかねないと思います。細分化されたアメーバ組織の成果ばかりを求める「サイロ化」の原因ともなりえます。これを回避するためには、OKR(Objectives and Key Results)のような、評価とは直結しない目標管理の仕組みを組み合わせると良いのではないでしょうか。

「ティール組織」でも自己組織化や
パーパスによる意思決定を重視

 アメーバ経営に続いて「ティール組織」について見ていきましょう。ティール組織とは、組織モデルについての調査をまとめたフレデリック・ラルー氏が、成果を上げる最新の組織のかたちとして提唱したものです。ティール組織では、組織を5つの段階に分けています。

「アメーバ経営」から「ティール組織」そして「DAO」へ、成功する組織の共通点は“自己組織化”作成/ムコハタワカコ
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 最も下位にある衝動型組織「レッド」は暴力など恐怖によって組織を支配する形態。続く「アンバー」は指令に基づいて軍隊のようにそれを実行していく組織です。

 3段階目の「オレンジ」は、現在の企業、米国などでは特に多く見られるかたちです。成果による昇級が可能な、完全なヒエラルキー型の実力主義的な組織です。

 次の「グリーン」はボトムアップ型で、人間関係を重視します。グリーンでは組織にやや家族主義的な要素が入ります。日本の組織はある意味「あいまいなグリーン」とも言うべき状態が多く、必ずしもそれがオレンジ組織より優れているとは言い切れないので注意が必要です。

 最終段階の「ティール」は、生命体のように有機的で、個人も組織も進化し続けるような組織です。この組織を実現するためには、「全体性(ホールネス)」「自主経営(セルフマネジメント)」「存在目的(パーパス)」が必要とされています。

 オレンジ組織では、階層構造により意思決定を上司が行い、承認プロセスが存在します。それがグリーン組織ではボトムアップ型の合意形成を取るようになり、ティール組織では、それぞれの意思決定がパーパスに沿っているかどうかで決まるため、意思決定のスピードが非常に速くなります。また、働く個人の納得感は、オレンジからグリーン、ティールへ移るに従い、高まることになります。

 ティール組織が生命体をメタファーとしており自己組織化を目指すという点、パーパスが意思決定の基本であることなどの特徴は、ここまでに挙げてきたアメーバ経営やリクルートなどの成功企業が掲げてきたことと、非常に近いのではないかと思います。