宿泊施設と予約管理サイトの
「関所」となったサイトコントローラー

 前述のような宿泊施設の悩みを解決してくれる存在として、2010年頃に登場したのが「サイトコントローラー」である。サイトコントローラーとは、複数の宿泊予約サイトに掲載されている客室在庫やプランの販売価格、宿泊者の予約情報などをまとめて管理するシステムを指す。宿泊予約サイトとホテルの管理システム(PMS:Property Management System)をつなぎ、オーバーブッキングの防止と販売管理業務の効率化を実現する。

 サイトコントローラーは各宿泊予約サイトとシステムがつながっているため、宿泊施設はサイトコントローラーから在庫の設定・予約の確認が一元的に行えるようになる。

サイトコントローラーの仕組み【図2】サイトコントローラーの仕組み 拡大画像表示

 たとえば、ビジネスホテル「APA HOTEL」を運営するAPA GROUPは、サイトコントローラーを導入した感想として、次のように述べている(*2)

「PMSで変更した在庫・料金が、サイトコントローラーを介して紐付けされた全OTAに即時で反映されるようになり、業務の効率化に繋がりました。また、全OTAで在庫が共有できるようになり、オーバーブッキングの懸念が解消されました。オーバーブッキングを恐れ少しずつ売り止めをかけていき、残室数が少なくなるに連れて販路が狭まるという状況もありましたが、これが導入によって一気に解消されることとなりました。連動しているOTAの実績をサイトコントローラーから確認することができ、分析にかかる時間も減少し、販売戦略を立てやすくなりました」

 国内の主要サイトコントローラーとしては、「手間いらず」「ねっぱん!」「TL-リンカーン」「Beds24」などがある。「手間いらず」は、この中で唯一の上場企業である。

 手間いらず株式会社は、もともとは「比較.com」という社名で、(「価格.com」と同じような)比較サイトの運営を行っていた。このサイトを使った広告事業で成功し、上場を果たしたことで、2007年から2010年頃にかけて、複数のネット系サービス企業の買収を行い、買収した企業の中にインストール型宿泊予約サイトコントローラー「手間いらず!」の販売をしている会社があった。

 サイトコントローラーは、当時競合も少なかったため順調に業績を伸ばし、これが同社の主力事業に成長した。その結果、2017年にサービス名と同じ現社名に変更した。