写真:詐欺,犯罪者写真はイメージです Photo:PIXTA

SNSやマッチングアプリで、見知らぬ美女や外国人の医師・軍人などから言い寄られ、メッセージをやりとりするうちに本当に惚れてしまい、お金を送ったり、仮想通貨などの投資話を持ちかけられたりする……こうした「ロマンス詐欺」「投資詐欺」の被害が増えているが、犯人は誰で、何のためにやっているのか疑問に思ったことはないだろうか。今年の夏、香港人や台湾人、さらには日本人をターゲットにした就職詐欺、人身売買の被害が広範囲で起き、海外メディアで連日報道されている。被害者はたいていカンボジアなどのメコン地域に連れて行かれ監禁される。この犯罪について調べていくと、上述のロマンス詐欺や投資詐欺、合法カジノ&オンラインカジノに関する人とお金の流れ、そして習近平氏の経済圏構想「一帯一路」にたどり着いた。この犯罪を取り仕切っているのは、中国人シンジゲートと言われている。中国人の彼らはなぜ、わざわざメコン地域で犯罪を行うのか。またなぜメコン地域が、このような犯罪の拠点として栄えたのだろうか?(中国・ASEAN専門ジャーナリスト 舛友雄大)

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発端は中国に長らくはびこっていた「電信詐欺」

 カンボジアを中心に、ミャンマー、ラオスなどメコン地域で頻発している就職あっせん詐欺・人身売買騒動。被害者は数百人、千人以上とも言われ、香港、台湾、マレーシア、インドネシア、ベトナムなど広域にわたり(日本人も何人か被害に遭っている)、実行犯は中国人シンジケートと言われているが、なぜメコン川流域の地域が、この犯罪の拠点となっているのだろうか。

 そもそも中国自身が、国内外に拠点を置く詐欺集団に長らく苦しめられてきた。日本の特殊詐欺に相当するいわゆる「電信詐欺」(電子メールや携帯メールなどを利用した詐欺のこと。参考:女子高生の死亡事件まで!中国の電信詐欺は撲滅できるか)は、2000年代に台湾からまずその対岸に位置する中国福建省で頻発し、その後、徐々に国内中西部に広まっていった。

 2020年には中国の「電信詐欺」被害はピークに達した。ピーク後も詐欺件数は桁違いで、中国公安部の統計では、2021年4月から2022年7月までの15カ月間に、59万4000件が解決に至り、3291億元(約6兆8000億円)分の詐欺犯人への送金が未然に防がれた。今年9月には、中国の全人代で予防的アプローチに重点を置いた「反電信詐欺法(中華人民共和国反電信ネットワーク詐欺法)」が成立した。

 中国における取り締まりの強化と同時に起きたのが、詐欺活動の拠点を海外に移転させる動きだ。象徴的な例として、2017年前後に中国オンラインカジノ界のゴッドファーザーと称される余凌雄氏が莫大な資金とともにカンボジアへ移住した。

 米国平和研究所に所属し、現地情勢に詳しいジェーソン・タワー氏は「中国人犯罪集団が東南アジアで集合している」と概観する。特に、2012年に習近平氏が実権を握った後に、中国国内で取り締まりが厳格化するにつれ、ガバナンスが弱く、腐敗した役人が多く、また注目もされにくい東南アジアに拠点を移す動きが出てきたとみている。