新日鐵住金の合併後最初の課題<br />和歌山製鉄所“新高炉”の行方昨年10月に誕生した新日鐵住金。逆風の市況の中、合併効果を模索する
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「合併後に迎える最初の大きな課題だ」──。

 1150億円を投じ、今期中の火入れを予定する旧住友金属工業の和歌山製鉄所「新第2高炉」。その一大イベントが、いつ催されるのかに注目が集まっている。

 高炉建設そのものは、ほぼ終えていながら、火入れ時期が一転、不透明になっているからだ。鉄鋼業界に詳しい証券アナリストは「少なくとも数カ月遅れるとの観測が広がっている」と明かす。これに対し、新日鐵住金は耐火レンガの最後の購入を控え、完成一歩手前のままの状態でとどめているとしている。あえて未完成のままなのは、多額の固定資産税の回避などが目的という見方が専らだ。

「今期中の火入れ方針に変更はない。市況が好転し、必要となればいつでも稼働できる」と新日鐵住金。あくまで、中国や韓国の攻勢により、だぶついた需給バランスが原因というスタンスだ。

 だが、合併の事情に詳しいある関係者は、冒頭のセリフとともに「表向きの理由は、需給調整で正しいし、その理由も無論ある。しかし、背後には、歴史的な経緯と合併の影響も大きい」と明かす。

 和歌山製鉄所は旧住金にとって象徴的な存在でありながら、以前から、パイプ以外は“お荷物”的な存在だったというのが、関係者の共通した見解だ。設備老朽化のみならず、大きな輸送船が入港できない港の水深の浅さなどがネックとなり、合併した今、他の製鉄所に設備投資するほうが、合理的だからだ。

「合併前、新日本製鐵側は、同じく住金の持つ鹿島製鉄所だけなら、すぐにでも欲しかったが、和歌山もついてくるというのが頭痛の種だった」とこの関係者は振り返る。その上で「住金側の気分を害さないようふたをしてきたが、市況が厳しい中、和歌山をどうするのかという判断を迫られるのではないか」と見立てる。

 この不透明な先行きに、企業城下町の和歌山市では、雇用不安さえ広がる事態となっている。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰、脇田まや)

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