日本ファンドレイジング協会による『寄付白書2012』が経団連出版より発行された。2011年における日本の寄付市場、寄付事情について綿密な調査とデータ分析により明らかにしている。今回は同白書のデータから、日本の寄付文化について考えてみる。

8500万人から6000億円。
2011年は日本の寄付元年

 2011年と言えば、例の東日本大震災が起きた年であり、膨大な額の寄付が集められたことも記憶に新しい。と同時に、どのような寄付がもっとも有効なのか? ということを、多くの日本人が考えるようになった。とりあえず有名どころの団体に寄付しておけばいいというのが、これまでの日本人の大多数の寄付行動だったと思うが、震災を機に、被災地ではどのような支援を必要としていて、そのために最も有効な寄付金の使い方をしてくれる団体はどこなのかを考えて寄付するようになった。これは寄付文化の進化という意味では画期的なことで、僕が「2011年は日本の寄付元年」と呼ぶ理由である。

「寄付白書2012」は「震災寄付、永久保存版」と銘打っているとおり、今回の震災における寄付とボランティアについて詳細な調査を行なっている。金銭または物資による寄付を行った人は約8512万人。個人と法人から義援金と支援金を合わせて約6000億円の寄付が寄せられた。うち、個人寄付は約5000億円である。被災地でボランティア活動を行った人は延べ約102万人である。

 同白書2011年版によれば、2010年の日本の個人寄付総額は約4874億円、法人寄付を合わせると約1兆円なので、これと比べても約6000億円という数字はやはり大きい。ただし、2011年8月19日時点での震災寄付や約3899億円なので(同白書)、9月以降12月までの寄付は約2000億円程度となる。震災支援関係者の間では、同年秋以降、寄付が急速に止まったと言われていたが、実際にはそれほど落ち込んでいなかったことが分かる。

 さて、震災寄付に関連して注目すべきは、これほど巨額の震災寄付が、寄付市場全体にどのような影響を与えたかである。つまり、震災寄付によって、通常の寄付が減ったのか、減らなかったのかということだ。

 結論は、2011年の震災寄付を除く個人寄付金額は約5182億円。前述の通り、2010年の個人寄付総額が約4874億円なので、震災による巨額の寄付が行われたにもかかわらず、通常の寄付も(若干ではあるが)増えていることになる。つまり、寄付市場全体で見ると、震災寄付の分だけ大きく増えたということになる。

日本の社会貢献寄付の実態は?

 この「震災以外の寄付」の内訳だが、「宗教関連=1680億円(32.4%)」がトップだ。これは、お布施や謝金は含まず、宗教団体、寺院・神社、祭礼への寄付とお賽銭の額である。ついで「日本赤十字社=958億円(18.5%)」、「政治献金=426億円(8.2%)」、「教育・研究=373億円(7.2%)」、「国際協力=354億円(6.8%)」となっている。教育・研究への寄付は、PTAや同窓会への寄付、入学時の寄付も含まれている。