新しい価値を生み出すのは、新しい企業

 変革を進める鍵となるのは、新しい企業だ。

「起業家の育成がなぜ重要かというと、起業家こそが世界のさまざまな問題を効率よく解決できるからです。例えば、地球温暖化や食の安全性などの課題解決には、今までにない斬新なアイデアが必要です」

 従来の慣習にとらわれていては柔軟な発想はできないし、その新しいアイデアを実現できるのは、ほとんどの場合が新しい企業なのだという。

「一般的に、時を経て組織の文化は形成されますが、同時に時を経るほど形成される慣習からは抜け出すことが難しくなっていきます。これは日本だけではなく世界共通の現象といえます。したがって、もし新しいことに挑戦したいのであれば、新しい組織を構築することが必要なのです」

 冒頭でも述べたが、ロウ氏は日本との関わりが深い。話を聞いていても、日本人の性格や習慣をしっかり捉えていると感じた。よい部分だけでなくネガティブな部分も見ているはずだが、日本の将来の可能性を高く評価しているという。

 ロウ氏の指摘とも重なる「チャレンジ精神が足りない」「グローバルな視点に欠ける」などは、日本人の特性として以前からよく議論されていることであるが、なかなか変わることができない部分であるともいえる。行政のスタートアップ支援というと、鳴り物入りの派手な施策を思い浮かべがちだが、まずは変化すべきところを変えていかないと先に進めないのではないだろうか。根本的な課題を解決することの重要性を改めて感じた。