B課長のチャットに対応するのは
サービス残業に当たる?

<B課長の行為は手待ち時間になるか?>
(1)業務命令として、勤務終了後や休日でも、会社が貸与したスマホの電源をオンにすることを強制していること。
(2)チャットの内容が万一の場合の緊急連絡とは言えず、なおかつ送信回数が多いこと。
(3)業務時間外に発信されたチャットに対して、すぐに対応することを求め、遅れた場合は業務命令違反として叱責していること。
(4)(1)から(3)の理由により、B課長がメンバーに要求していた行為は手待ち時間になる可能性が高い。その場合残業代が発生する。もし残業代を支払わなかった場合はサービス残業になるため労働基準法違反になることもありうる。

「では、会社が今後、上記の行為について残業を認めない場合はどうなりますか?」
「B課長が出した勤務時間外、休日のチャット対応に関する業務命令は原則無効になります。メンバーがスマホの電源を切っても叱責の対象にはなりませんし、万一の事態に備えて電源をオン状態にしている場合でも、B課長には緊急時以外、部下へのアクセスをやめてもらうよう、会社が指導することになります」

「チャットには即レスしろ!」は
上司のパワハラになるか

「分かりました。ところでパワハラの件はどう判断されますか?」

<パワハラ(パワーハラスメント)の定義>
パワハラとは下記(1)から(3)まですべての要素を満たすものをいう。
(1)優越的な関係を背景にした言動であること。
(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること。
(3)労働者の就業環境が害されるものであること。
ただし、客観的に見て業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については該当しない。

<パワハラの6類型>
(ア)精神的な攻撃
(イ)身体的な攻撃
(ウ)過大な要求
(エ)過小な要求
(オ)人間関係からの切り離し
(カ)個の侵害

<B課長の行為はパワハラに該当するか>
(1)勤務時間中だけではなく、勤務終了後や休日にまで高頻度で緊急性や必要性のないチャットを送り、しかもその全部についてメンバーに即答を求め、対応が遅いメンバーに対しては叱責するなどの行為は、業務上必要かつ相当な範囲を超えており、なおかつ上司として優越的な関係を背景にしたものであること
(2)就業時間外や休日にまで、業務命令としてB課長のチャット連絡への待機をさせることは、メンバーに対して精神的、身体的に苦痛を与えるものであり、就業環境の悪化につながること
(3)(1)(2)によってB課長の行為はパワハラであると認定される可能性が高い