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2019年4月から、従業員への年5日の年次有給休暇の確実な取得が義務化されています。しかし甲社では上長が部下へ大量の業務を割り振る結果、特定の部署のメンバーが全員有給休暇を取るどころか休日出勤も当たり前の事態が続いてしまい……このまま有給休暇を取得できない事態が続くと、会社が労働基準法違反になってしまいます。どんな罰則が待っているのでしょうか。またその対処法は?(社会保険労務士 木村政美)

<甲社概要>
機械設計を専門に行う創立40年の会社で、従業員数は100名。設計部門は1~8課まであり、それぞれ課長とメンバー(主任と課員6名)の合計8名ずつの構成になっている。
<登場人物>
A:甲社設計1課主任。30歳
B:Aの上司で、設計1課の課長(以下「B課長」)。35歳
C:甲社総務部長(以下「C部長」)。50歳
D:甲社の顧問社労士

仕事が多すぎて、年5日の有休が取れない

 8月下旬のある日、自席で朝からパソコンにかじりつき、自身が担当している設計業務に没頭していたA。ふとパソコン画面の時計に目をやると11時55分になっていた。

「もう昼休みの時間だ。速攻で弁当買ってこなきゃ」

 Aは毎日昼休みになると、会社の近くにあるスーパーで、日替わり弁当と飲み物、夕食用の軽食を購入するのが習慣になっていた。お気に入りの日替わり弁当はいつも他の客との争奪戦になるため、ゲットするには今すぐに会社を出る必要がある。

 Aが椅子から立ち上がったその時、B課長がやってきて言った。

「A君、今日締め切りの仕事はできそうかね?」
「今急いで仕上げているところで、夜までには提出できます。すみませんが急いで弁当買いに行きたいのでこれで……」
「待ちなさい。昨日C部長からメンバーの年次有給休暇(以下「有休」)取得状況について連絡があった。君は今年度、まだ有休を1日も取っていないそうだから、仕事を調節して9月末までに最低5日間は休んでね」
「その件でしたら、今日の朝、総務部に9月の上旬に5日間の有休を取ることにしたと申請書を提出したところです」