これまでも、一度日本が失った市場を取り戻すべく、日の丸連合を作ったケースは多々あった。エルピーダメモリやジャパンディスプレイなど、いずれも規模を追わない日の丸連合で失敗をしている。ラピダスもこれらの失敗は意識しているのか、「日米連携による新会社は日の丸連合ではない」としているが、IBMも苦戦する半導体産業において、台湾や韓国の勢いにどれだけ対抗できるのであろうか。

 そもそも規模の経済性を無視して、小規模で最先端ということが可能なのだろうか。最先端のことをやるには開発費がかかる、一方で、数を追って莫大な既存事業の利益を上げている会社と、細々と小規模な売り上げを立てている会社のどちらがその先の投資に有利かは、火を見るよりも明らかだ。

 ただし、ここでいう規模というのはIDM(自社で設計、製造、販売まで手がけるメーカー)による少品種大量生産を意味するわけではない。ファウンドリービジネスでは、多品種少量生産をひとつのファウンドリーで集約して大量生産のメリットを活かすことができるので、ファウンドリーが半導体ビジネスの主流になった。ファウンドリーの多品種少量はあくまで大量生産の規模の経済性を最大限活かしているケースだ。

半導体製造装置の
優位性に不安材料も

 もうひとつの不安材料は、製造設備だ。今でも半導体の部材や製造設備で日本には優位性のある分野が多いが、半導体製造に必要な露光装置に関していえば、かつて日本のキヤノンなどがアメリカのキャスパーから近接露光方式で優位を勝ち取ったのに対して、近年ではオランダのASMLがより高性能なEUVリソグラフィ露光装置で日本のニコンやキヤノンよりも優位に立っている。

 現時点でASMLの露光装置なくして、ビヨンド2ナノの製造は不可能であろう。ASMLが新世代露光装置を独占している状況は、米国にとって必ずしも好ましいことではない。ASMLが中国に露光装置を輸出するのを禁止するよう、米国政府がオランダ政府に圧力をかけたほどであり、より与しやすい日本がこの分野で優位に立つことは米国の利益にもかなう。とはいえ、政府の思惑通りに企業の競争力が高まるわけでもない。