さらにいえば、近年の良好な日台関係も両者のアライアンスを後押しするだろう。米中対立や、ロシアのウクライナ侵攻、3期目に入る中国習近平政権と、東アジアの安全保障に緊張状態をもたらすイベントが多い中で、日本と台湾は同じ脅威に接しており、両者の連携はますます重要になってくるといえる。

 また、台湾には日本が必要とする産業も多く、台湾企業への投資は国際的に見ても極めて利回りが良いが、これだけ日台関係が良好で経済的な結びつきもあるのに、日本から台湾企業への投資はほとんど行われていない。台湾側が望んでいないかといえばそうではなく、むしろ「なぜ日本はもっと台湾企業に投資をしないのか」という声が、台湾の財界からは聞こえてくる。

単なる連携ではなく
台湾の技術や能力を吸収せよ

 現在はもっと積極的に台湾との連携を深める好機であり、半導体はその最も有望な候補と言えるだろう。ラピダスもまだその設立が発表されたばかりで、量産に向けてどのような体制を築くのかは不明なところもある。今発表されている米国企業との連携だけで進むということもあるのかもしれない。

 しかし、最先端のプロセスでリードする台湾の半導体産業を巻き込むという意味でも、また日本が得意ではない価値獲得の領域でいかに戦略的に立ち回るべきかという意味でも、日本は台湾との関係をもう一度考えてもよいのではないだろうか。

 そのときは、単なる業務提携ではなく、日本から台湾の有望な企業への投資を増やし、台湾の技術やビジネスの能力を日本のものにしていくということも、重要ではないだろうか。

(早稲田大学大学院 経営管理研究科 教授 長内 厚)