だからといって、日本がこの分野を簡単に諦めてしまっていいということではないだろう。26ナノプロセスの汎用性の高い技術については、熊本に台湾TSMCを誘致したように、日本はすでに日の丸連合にこだわらない半導体施策を進めている。

 にもかかわらず、日本が最先端半導体の開発に乗り出すのは、半導体技術が安全保障に直結しているということもあるだろう。ウクライナでの紛争において民間のドローンが活躍しているように、民生用技術と軍事技術の垣根が低くなっている今日、AIやIoT技術に必須となる最先端半導体の国産化は、経済だけでなく安全保障上も重要になるだろう。とはいえ、国際競争力がつかなければ絵に描いた餅に過ぎない。

日本が台湾に学ぶべき
ビジネスでの「価値獲得」

 冒頭で述べた台湾との連携というのも、簡単な話ではない。ラピダスの小池淳義社長は、日立製作所と台湾第2位の半導体ファウンドリー・UMCとの合弁でファウンドリーの立ち上げを目指したトレセンティにおいて量産を指揮したが、それでも上手くいかなかった。その要因は様々指摘されているが、日本は台湾と組むときに、台湾の生産能力だけを活用しようとしているからではないか。

 日本が台湾から学ぶべきは、いかに制約条件が大きい中でビジネスの構想力によって課題を突破し、収益化に結びつけるかというビジネスの能力であろう。日本は価値創造が得意であるが、台湾が得意なのは価値獲得である。台湾を単に日本の製造手段として見ていると、台湾を過小評価することになる。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業がシャープを再建したり、熊本の汎用性の高い半導体事業にTSMCを誘致したりと、台湾の価値獲得の能力を活かす日台アライアンスの事例も増えてきている。

 また、政策としての海外との連携という点では、日本は台湾と公式の外交関係がなく、日本の政府機関は、出先の民間組織として日本台湾交流協会を通じた外交政策を行っている。各省庁がひとつの出先機関に集中しているのは台湾だけであり、交流協会というひとつの組織で関係省庁が連携をとりやすい環境ができているのも、日台アライアンスを進める上でのメリットだ。