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加藤嘉一の「だったら、お前がやれ!Ⅱ」思考停止のニッポンをぶった切る

外で学ぶ中国人エリートは祖国をどう変えるか――
ラッド前豪首相と英国で考える

加藤嘉一
【第19回】 2013年2月4日
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二度目のイギリス訪問

 1月25日午後、約1年ぶりにロンドンに降り立った。ヒースロー空港からタクシーで市内へと向かう。街並みは一年前と何も変わらない。街の所々で工事が行われている。

 「インフラはまだまだ未整備だから――」

 アラブ系の運転手が私にこう言った。9年間暮らした北京とは違って、人々は渋滞にイラつく仕草を見せない。地下鉄の駅を行き来する多様な人種。約半年前に行われたロンドン五輪の前と後で何が変わったのか。少なくとも私には如何なる変化も見いだせなかった。

 「五輪なんて別に特別なことじゃない。ロンドン市民だって選手や観光客を特別に接待したわけではないし、何も変わらないよ。すべては日常のまま」

 運転手さんは冷静沈着にこう語った。現実を皮肉るかのように。

 その夜、ロンドン市内にある「Shanghai Blues」という現地では有名な中華料理屋での食事に招待された。イギリスに移住して20年になるという中国人店長に「五輪を経て、経済はどうですか?」と聞くと、「景気が良くなったのは五輪の期間だけ、さっぱりだよ。ユーロ圏における財政危機がイギリスにも押し寄せているのを感じるね」とドライだった。

 人生二度目のイギリス訪問となった今回は、昨年度に引き続きロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(London School of Economics and Political Science, LSE)で開催される中国関連の学術フォーラムに、スピーカー、パネリストとして出席することが主目的であった。

ケビン・ラッドからのメッセージ

 2013年度のテーマは「China in Transition」(転換期の中国)。中国ビジネス、経済成長、ソフトパワー、領土紛争、市民社会、若年層の台頭、外交関係、法治改革など、多分野におけるスピーチやパネルディスカッションが朝から晩まで行われた。

 イベントはLSEで学ぶ中国人学生と、中国語を学び、中国を研究する現地学生との共同作業で準備され、大学側も全面的に支援をしていた。受講者は事前に申し込み、30~50ポンドの参加費を払わなければならなかったが、当日は300人以上のLSE学生が会場へと押し寄せ、イベントは大いに盛り上がった。

 中国を代表する知識人や、国際的に活躍する西側からの中国問題研究家らと最新の中国情勢を巡って議論を交わすことができたことは収穫だった。

 私は「中国問題を巡る国際舞台」で発信していくことが、日本人のグローバルプレゼンス向上に資すると考えてきた。2012年上半期までは中国国内における発信が中心だったが、拠点をアメリカに移し、米中を跨ぐスタイルにシフトしつつある今、欧米を中心とした国際舞台での中国発信により一層力を入れていきたいと考えている。

 パネリストの一人で、直前にスイスで開催されたダボス会議からラッシュで駆けつけたケビン・ラッド(Kevin Rudd)第26代オーストラリア首相がクロージングスピーチを担当した。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一の「だったら、お前がやれ!Ⅱ」思考停止のニッポンをぶった切る

「だったら、お前がやれ!」

 この言葉が意味すること、それは「対案の無い無責任な批判はするな」ということだ。「自分はどう考えるのか」、そして「自分は具体的にどのような行動をとるのか――」。何かに意見するとき、加藤氏は必ず自らに問いかける。加藤氏の行動規範としているものだ。
日本社会に蔓延る無責任な論評を、加藤氏の視点で切り込み、加藤氏なりの対案や考え方を示してきた本連載のシリーズ第2弾。2012年8月に加藤氏が拠点を中国北京から、米ハーバード大学ケネディースクールへ移し、新たなチャレンジをスタートさせる。2012年4月から8月までの第1弾とはひと味違う、加藤氏の言葉をお届けする。

「加藤嘉一の「だったら、お前がやれ!Ⅱ」思考停止のニッポンをぶった切る」

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