合併・合弁会社設立を繰り返し、大きくなっていた中国の造船業界

 15年10月21日、中国船舶集団(CSSC、略称は「中船集団」)、中国投資有限公司(CIC)と世界最大のクルーズ会社である米国のカーニバル社は、合弁協力協定に調印した。

 そして、16年5月に、中船集団はクルーズ船事業に特化した専門会社、中船クルーズを設立。同年7月、旧・中国造船工業公司(CSIC)とイタリアの総合造船グループ企業・フィンカンティエリは、香港に豪華客船の設計・建造を行う合弁会社を設立する契約に上海で調印した。

 また17年に、中船集団は世界最大のクルーズ企業、米カーニバル社と一緒に、中国が管理する国際クルーズ合弁会社「CSSCカーニバルクルーズシッピング」(通称、カーニバル・チャイナ)を香港に設立した。

 18年11月、中船集団は、カーニバル・チャイナを通して、クルーズ船建造で豊富な実績を持つイタリアのフィンカンティエリ造船所の技術指導などを入手し、今後もクルーズ船建造に注力していく事業方針にも自信を持てるようになった。

 そして、カーニバル・チャイナは「アドラクルーズ(中国語は「愛達郵輪」)」のブランドで運航する新造船の発注を始めた。冒頭の大型クルーズ船・アドラ・マジックシティー号は、アドラクルーズの第1号だ。姉妹船となる2隻目の建造も、24年の竣工を目標に始まっている。

 現段階では、カーニバル・チャイナが確実に発注したのは2隻で、契約価格は1隻当たり7億7000万ドル(約1063億円)だ。第1号船のアドラ・マジックシティー号は全長が約324メートル、総トン数は13万5500トン、乗客定員は5246人に上る。完成後は、上海を母港とする国際航路に投入される予定だ。

 19年11月、中国政府はさらに中国造船1位の中国船舶工業集団(CSSC)と2位の中国船舶重工集団(CSIC)を経営統合させ、新会社「中国船舶集団」を設立した。総資産が7900億元(約15兆円)で、従業員は31万人という造船大手となり、造船の建造量は世界シェアの約2割に達し、世界首位の韓国の現代重工業に迫る世界第2位となった。