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マイクロソフトを飛び出した社会起業家に学ぶ
【第1回】 2013年4月1日
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予算ゼロ。それでも大きなムーブメントを起こす方法
スターバックスの出店スピードをもしのぐ“超成長組織”をつくる

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マイクロソフトの要職を辞したジョン・ウッド氏が、途上国の子どもたちに教育機会を提供しようと立ち上げたNPO「ルーム・トゥ・リード」。10年強で学校1500校以上を建設、図書館・図書室に至っては1万5000カ所以上設置してきたというから驚きだ。これは、スターバックスの5年目における出店スピードをもしのぐペースだ。
さらに注目すべきは、ルーム・トゥ・リードは潤沢な“マーケティング資金”もないなかでこの成果を上げてきたという事実。彼らはいったいどのようにしてムーブメントを広げていったのだろうか?

7000人以上のボランティアを巻き込む“超成長組織”

マイクロソフトのマーケティング部門の重役の座を捨て、2000年にルーム・トゥ・リードを設立したジョン・ウッド氏。アジアとアフリカの10カ国で780万人以上の子どもに教育と読み書き能力という生涯の贈り物を届けている。ウッド氏の最新刊『僕の「天職」は7000人のキャラバンになった』には、前著『マイクロソフトでは出会えなかった天職』の“その後”が描かれている。
《ルーム・トゥ・リードの実績》(2013年3月現在)
学校建設 1500校以上
図書館・図書室開設 1万5000カ所以上
現地語出版 874タイトル
女子教育支援 2万人以上

Photo: Sergio Villareal

 マイクロソフトでマーケティング・ディレクターを務めていたジョン・ウッドが、たまたま訪れたネパールの奥地で目にした“本のない図書館”。教育資源が不足している途上国の現状に衝撃を受け、子どもたちに教育という機会を届けようと立ち上げたのがルーム・トゥ・リードの始まりだ。その設立のいきさつは、彼の1冊目の著書『マイクロソフトでは出会えなかった天職』に詳しい。

 ルーム・トゥ・リードのビジネスモデルは、1)先進国で資金を集め、2)それを途上国の教育プログラム(既存の学校への図書室設置、図書館や学校の建設、女子教育支援、現地語図書の出版など)に投資するというものだ(詳細はルーム・トゥ・リードのHPを参照されたい)。

 先進国での資金集めに大きく貢献しているのは、世界各地に現在60近く存在する「チャプター(支部)」と呼ばれる組織。ここに延べ7000人以上のボランティアたちが集い、資金集めをはじめルーム・トゥ・リードの活動に協力している。東京チャプターには現在1000人のボランティアが参加しており、その数はルーム・トゥ・リードのチャプターの中でも最大規模だ。

 では、ほんの数年前まで日本ではまったくの無名だったルーム・トゥ・リードが、なぜこれほど多くのボランティアを巻き込み、資金を集めることに成功したのだろうか?2006年に東京チャプターを創設したメンバーのひとり、コールドウェル中島恵さんは次のように振り返る。

東京チャプターが活動を始めた当初、ルーム・トゥ・リードの資金集め(ファンド・レイジング)モデルが日本の文化に定着するのは難しいのではないかと思いました。

 当時の日本では、チャリティといえば「学校のバザーでお母さんたちが“小銭”を集めるもの」というイメージ。これを根本的に変えないかぎり、日本での成功は難しいと感じました。前職でマーケティングやブランディングの経験はありましたが、さすがにマーケティング予算がまったくのゼロ、というのは初めての経験でした。

 このような環境で、どうすれば日本でも受け入れられるだろう――しかも予算をかけずに。コールドウェル中島さんはこう続ける。

これは従来のバザー的チャリティではなく新しいムーブメントであって、誰もができる将来への「投資」であることを理解してもらう必要がありました。自分の時間を使ってやるのだから「楽しくてやりがいがあり」、そして投資であるからには「結果」を出さなければいけなせん。

 さらに、あらゆる人が自分のスタイルで参加できることも大切です。私も含め、全員がボランティアですから、企業のような上下関係をつくってはいけません。各人が自分のできることを、自分の責任において行う全員参加型の取り組み、いわばセルフサービス的な活動を展開する必要がありました。

  ルーム・トゥ・リードの取り組みは途上国の子どもたちの将来に対する投資なのだという「目的」を明確にし、「結果」に焦点を当てながら、しかしやっていて「楽しい」、全員参加型の取り組み――スターバックスの成長スピードをもしのぐルーム・トゥ・リードの成長の秘訣の一端は、どうやらここにありそうだ。

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