大手不動産企業も照準を据える西成エリア

 西成区内には、日本の大手不動産企業が買い上げたとうわさされる200坪近い土地さえ出現するようになった。現在は、駐車場として一時使用に供されているが、いずれここに再開発物件が建設されるのだろう。

 この周辺が生活保護者が多く住む場所であることは、支援団体や不動産屋の広告物からも理解することができる。昭和のある時点で時間が止まってしまったような寂れたエリアだが、上述した駐車場の近くだけでも再開発のための工事現場が3カ所もあり、整地するブルドーザーのうなり音やカンカンという槌音を一帯に響かせていた。

 ちなみに、3カ所の工事現場の中には中国資本も存在する。彼らが注目するのは、底地の安さである。地元不動産のサイトによれば、このエリアの取引価格の相場は平米単価にして19万円だという。

 このような、不動産の取引事例が少なかった“閉ざされてきたエリア”に進出できるのも、「過去の因縁ではなく将来性を見る」ことができる外資ならではの強みなのかもしれない。地元商社幹部はこう話す。

「西成区は、不動産取引のみならず、生活者として入って来る中国人が増えました。結果として、昔に比べてだいぶ治安がよくなり、暗いイメージがだいぶ薄れました」

 静かに動き出す“西成経済”、その萌芽を前向きに評価する声は確かに増えてきている。