西成一帯を変貌させる中国資本

 日雇い労働者の町「あいりん地域」で知られる大阪市西成区がそれだ。2010年を前後して、「動物園前一番街」から「動物園前二番街」へと延びる商店街の空き店舗を中国資本が買収し、その後、瞬く間に中国系カラオケ居酒屋が数を増やした。

 当初は、客引きや大音量のカラオケ、ゴミの不始末などの諸問題が増え、一層の無秩序化が進んだことから、一部メディアも「危険地帯にできた怪しげな店舗群」として警戒を高めた。一方で、日が暮れれば暗闇に沈む、治安の悪い商店街に電気がともるようになったという意味では、この地におけるエポックメーキング的な事例となった(詳細は当コラム『西成あいりん地区「中国系ガールズバーが占拠で無法地帯化」報道の意外なその後』を参照)。

 あいりん地域の一角に「中国系」がはびこるようになって起きた諸問題も、およそ10年という歳月を経て解決に向かった。しかし、高齢化による店主引退がもたらす空き店舗化は続いており、住民は今なお「半永久的にシャッターが上がらない商店街がいいのか」「中国系カラオケ居酒屋がズラリと連なる商店街がいいのか」に頭を悩ませている。

「たまらなく嫌や」中国マネーが大阪・道頓堀を飲み込む!“儲かってなんぼ”が命取り?不動産の取引事例も少なかったといわれる西成区で出現する新築現場(著者撮影)

 それでも、中国系カラオケ居酒屋の客層の変化が物語るのは、「のびしろが見込まれる町」として徐々に評価されるようになったということだ。

 今では、ビジネスマンや観光客のみならず、日本の大手企業の経営陣も、この「手つかずの好立地」を視察に訪れるようになった。大阪で埋もれている「宝」に中国人が先に気づき「開拓」したところで、ようやく日本企業が食指を動かし始めた形だ。