日本のインバウンドに中国資本、道頓堀は誰の街?

 筆者は、大阪を代表する観光地「道頓堀」を訪れた。道の両脇には飲食店やお土産屋、ドラッグストアなどが立ち並び、外国からの観光客の関心を引きつけていた。

 大阪市内で生まれ育ち、この街の変遷を見てきた田中リュウさん(仮名)は歩きながら「ここも中国資本やね、あのビルは丸ごと一棟、中国人が購入しましたわ」と子細に説明してくれた。雑居ビルに入っている飲食店やクラブも「中国系が増えている」とのことだった。土産物屋も免税店も一目にしてそれとわかる。

 話を聞く限り、中国資本は道頓堀の飲食や物販を含む観光産業にかなりの割合で潜在しているようだった。日本のインバウンド市場における商機を狙い、“ど真ん中”目がけて進出してくる中国資本には、歴史に名を刻んだ大阪商人さえも圧倒する勢いがある。

 道頓堀界隈ではマンションなど不動産購入も進む。だが、アンバランスも生じている。

 前出の井出氏は「道頓堀界隈でも中国資本はどこもかしこも入り込んでいますが、一方で周辺の大阪市部と比較すると中心部との勢いに格差が生じています」と指摘する。

 中国資本による投資の波及効果のエリアは限定的であり、大阪経済全体の底上げには遠いようだ。