震度7にも耐えられるはずが
震度4の揺れでサイレンが故障

 名取市に取材すると、昨年12月の津波警報のときに鳴らなかったのは、3.11後に、沿岸部に3基設置された「モーターサイレン」。防災行政無線のほうは、警報発表の1~2 分後から放送されたという。

 サイレンが鳴らなかった原因について、市の防災担当者は、こう説明する。

「構造計算が甘かったということですね。市としては、(3.11のときに鳴らなかった)行政無線のことが頭にあったので、サイレンを設置する業者さんに“震度7の地震や風速50メートルの台風でも大丈夫なように”と、繰り返し説明し、業者さんも“大丈夫です”と約束して施工したんです。ところが、実際には、(余震の)震度4の揺れで、ずれるはずのないアンテナがずれてしまった。それが原因で通信することができず、サイレンが鳴らなかったのです」

 震度7の揺れでも大丈夫なはずのアンテナが、震度4の揺れでずれて、津波警報のサイレンが鳴らなかったという事実は、何とも衝撃的な話である。

 余震の後、メーカー側は市役所を訪れて、市長に謝罪。2月末には「我々の責任で万全の対策を講じました」との報告を受けたという。

「結局、モーターサイレンは、職員がすぐに役所から飛び出して、手動で動かしました。ただ、閖上小学校近くの方からは、小学校の防災行政無線に付いているサイレンが、ずい分よく聞こえたそうです」(市の担当者)

 ただ、防災行政無線については、設置されている場所が、地区公民館と閖上小学校、市役所のみ。確かに、市内すべてをカバーできるわけではなく、聞こえる範囲は限られている。

 そのため、市では「揺れを感じたら、ラジオをつけてください」「携帯電話で緊急速報メールを設定してください」などと、市民には以前から、啓発を行ってきたという。

「防災無線が鳴っていれば…」
閖上に向かう車で犠牲になった人々

閖上2丁目。右は、居住区でのかさ上げ工事と同じ高さまで盛り土したものの展示されている。名取川まで280メートルあまりの交差点で撮影(2013年3月9日)
Photo by Y.K

 2年前のあの日、内陸部で仕事していたBさんは、妻と母親を亡くした。

 地震の後、他の街で働いていたBさんの妻は、閖上の自宅にいる母親を迎えに行こうと向かっている途中、津波にのまれ、仙台東部有料道路の土手の堀で遺体が見つかった。母親も自宅から避難することなく、亡くなったという。

 妻の爪を見ると、東部道路の堤防を必死に登ろうとしたのか、土がめり込んでいた。