日常生活でわかる
「難聴のサイン」とは

 また、難聴はその程度によって軽度難聴、中等度難聴、高度難聴、重度難聴と4段階に分類される。軽度難聴は会話が聞き取りづらくなったと感じる程度だが、中程度難聴では相手が近くにいないと聞き取れず、日常生活に支障が出始める。

 高度は、耳元で大声で話してもらわないとままならないレベルであり、さらに重度であれば、聞こえるのは工事現場の騒音や自動車のクラクションといった大きな音だけになってしまう。

「軽度難聴のサインとしてよくあるのは、『カトウ』と『サトウ』など似た名字を聞き間違えてしまうこと。難聴は高い周波数から聞こえなくなり、言語であれば子音から聞き取りにくくなるからです。他にも飲み会や会議など大人数での会話の内容が理解できなくなることも挙げられます。一対一で話すときは集中していますし、表情や口の動きなど視覚情報からある程度理解できますが、大人数となると耳の感度が重要になります。難聴が進行していると、それらの音が聞き取りにくくなるのです」

 小川氏によると、軽度難聴の時点で病院に訪れる人は多くはない。ほとんどは中程度難聴から来院するそうだが、そのまま放置しておけば認知機能にも影響を及ぼしてしまうという。

「難聴は認知機能の低下につながります。中等度難聴を放置したままだと、認知機能が7歳衰えるというデータもあるほどです。多くの人は言葉を聞いて理解して、面白さや悲しみなどの情動を感じます。これによって脳の認知機能が活性化するわけですが、言葉が聞こえず理解できないとなれば、そのような刺激がなくなるのです。ゆえに、認知をつかさどる細胞の働きもだんだんと衰えていく。また、会話ができなくなると、人付き合いや外出がおっくうになって周囲から孤立していきます。社会的な孤立によって他人との接触がなくなると認知機能は衰え、認知症への影響が懸念されています」

 難聴は耳だけではなく、さまざまなところに影響し、QOL(生命・生活の質)を著しく低下させてしまうのだ。