狂騒!半導体#7澤田純・NTT会長(右)と黒田忠広・東京大学教授。 Photo by Masato Kato

生成AI需要と地政学リスクの高まりから、半導体市場は2030年に約150兆円市場になるとの強気予想が飛び出している。国家間、企業間での投資競争が熾烈化しており、半導体業界の勢力図が大きく塗り変わろうとしている。特集『狂騒!半導体』(全17回)の#7では、日本の半導体戦略を中枢で動かすキーパーソン2人に、日本陣営の勝ち筋について聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 村井令二、浅島亮子)

>>対談前編『半導体は3回目の成長期、TSMC日本進出の狙い…NTT澤田会長×東大黒田教授【特別対談/前編】』から読む

国策会社ラピダスが打ち出す
TSMC・サムスン対抗策

――最先端ロジック半導体を手がける国策会社、ラピダスについてお聞きします。2ナノ半導体の製造技術を日本で確立するという壮大なチャレンジです。超えるべきハードルが高く、公然と成功しないと断じる識者も多いですが……。

黒田 自動運転とAI(人工知能)のサービスが拡大する中、最先端ロジック半導体は大きなチャンスです。批判はありますが、覚悟を決めたならば、楽観的にゴールへ向かう方がイノベーションを起こしやすいですよ。逃げ出しては駄目ということを当事者が確認することです。

 20~25年寝ていた人が起きたと思ったら、レースの最先端に飛び込むなんてむちゃでしょうという意見があります。

 でも実はよく考えてみると、最初から2ナノに挑戦するのが合理的なのです。それより手前のプロセスノード(半導体の製造技術の世代)になると、ライバルの集団が増えていくので太刀打ちできません。

(台湾TSMCや韓サムスンなどの)相手は設備の減価償却を終えてコスト競争力を付けてしまっています。そうした相手にコスト勝負を挑むのは得策ではありません。

澤田 (5ナノ、7ナノなど)手前のノードはレッドオーシャンですもんね。

黒田 それに最先端の半導体生産における競争軸は、コストだけではないのです。

果たしてラピダスはコスト競争力とは異なる「どのような土俵」で戦おうとしているのか。次ページでは、ラピダスが目標を実現できないとする“失敗説”に反論していただこう。また、NTTでは次世代半導体の鍵を握る「光電融合技術」の開発を進めている。NTTは、携帯電話IP接続サービス「iモード」が普及しなかった教訓を、光電融合技術ではどう生かそうとしているのか。