昔と今で変わった歯医者に行く理由、ウェルビーイングの視点で生まれる「新しい価値」健康な歯を保ち、毎日おいしく食べたい (写真はイメージです)Photo:PIXTA

「ウェルビーイング」は、1948年の世界保険機関(WHO)設立の際に考案された憲章で、初めて使われた言葉。「幸福で肉体的、精神的、社会的全てにおいて満たされた状態」をいいます。新しい幸せの形として用いられ、最近さまざまな場面で耳にすることが多くなりました。連載『ウェルビーイングの新潮流』では、ウェルビーイングによって私たちの暮らしがどのように豊かになるのか、解説していきます。

お菓子の中でもイメージがよくなかったガムが
“体にいいもの”になった

 前回のコラムでは、体と心、そして社会との関係性という三つのウェルビーイングの要素の中で、企業と顧客の関係性を再定義することで製品、サービスにブレイクスルーとなる新しい価値を生み出す「関係性のリデザイン」というアプローチをご紹介しました。

 さまざまな業種・業態の企業が顧客との関係性をリデザインすることで、ウェルビーイングビジネスに参入してきています。気づかないうちに、私たちはそれを享受しているかもしれません。

「関係性をリデザインする」とはどういうことなのか? 私の実際の経験をもとに、ご説明します。

 それは、まったく新しい商品やサービスをゼロからつくり出すのではなく、既存の商品、サービスに、新たな視点を加えることで新しい価値を見いだすことです。新しい価値が生まれることで、競争の激しい既存市場のレッドオーシャンで戦うのではなく、新しく創造された新市場で、今まで顧客ではなかった層にリーチできる可能性が広がります。

 私が子供の頃、ガムはお菓子の中でもあまりいいイメージのないものでした。遠足のおやつにアメとチョコレートは認められていましたが、禁止されていたのがガムでした。人前でガムをかむことはマナーが悪いこととされ、包み紙に包まないガムのポイ捨ても問題とされていました。そんなガムへの認識が、虫歯予防効果のある「キシリトールガム」が登場によって、“体にいいもの”として百八十度変わったのではないでしょうか。