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「予期せぬ成功ほど、イノベーションの機会となるものはない。これほどリスクが小さく、苦労の少ないイノベーションはない。しかるに予期せぬ成功は無視される。困ったことには、その存在を認めることさえ拒否される」(『イノベーションと企業家精神』)
予期せぬ成功を認めるのは容易でないとドラッカーは言う。勇気がいる。現実を直視する姿勢と、間違っていたと率直に認めるだけの謙虚さがいる。
人は誰しも、長く続いてきたものが正常であって、永久に続くべきものと考える。自然の法則のように受け入れてきたものに反するものは、すべて不健全、不健康、異常として拒否する。
予期せぬ成功は気づかれさえしない。注意もされない。利用されないまま放っておかれる。そこへ誰かが現れ、市場と利益をさらっていく。
予期せぬ成功に気づかないのは、今日の報告システムが注意を喚起するどころか、報告することさえしないからである。
月ごとあるいは四半期ごとの報告書は、その1ページ目において目標を達成できなかった分野と問題を列挙している。
定例の経営会議や取締役会では当然のこととして、目標以上の成果を上げた分野ではなく、問題の起こった分野に関心を向ける。
「予期せぬ成功は、体系的に探求していかなければならない。まず行うべきは、予期せぬ成功が必ず目にとまる仕組み、注意を引く仕組みをつくることである」(『イノベーションと企業家精神』)