貧しい家庭で育った父が手にした“中産階級への切符”

神田 世界には問題が山積しており、開発途上国の子どもたちへの支援としても、環境、医療、食、安全など、さまざまな領域があります。そのなかで教育に注力し、なかでも識字率の向上と教育の男女格差の是正を掲げられている理由を教えてください。

ウッド 教育というのは、水面に石を落とすと広がる波紋のように、影響がどんどん拡大していくものだと思います。たとえば、教育を受けた女子が家庭を持てば、その女性の子どもたちの教育も変わっていくでしょう。女性が教育を受けるほど、子どものワクチン摂取率は上がり、乳児死亡率も母子死亡率も減らすことができます。教育によって、安定した平和な世界を築くことができるのです。

 私の父は貧しい家庭で育ち、7人兄弟のなかで唯一、大学に進学しました。貧しくても進学できたのは、奨学金を受けることができたからです。父はよく、「奨学金が我が家にとっての中産階級への切符だった」と言っていました。

 だからこそ、私は教育の重要性がわかっていたのです。もしも私が教育制度の整備されたアメリカで育っていなかったとしたら、マイクロソフトに就職することなどできず、若くして多くのお金を稼ぐこともできなかったでしょう。私の考えでは、教育の支援は経済的にも理にかなっているのです。

※この対談の後編は5/9(木)配信予定です。


 【新刊のご紹介】
あのロングセラーに待望の続編が登場!
ジョン・ウッド著『僕の「天職」は7000人のキャラバンになった

【ジョン・ウッド氏×神田昌典氏対談 前編】<br />NPOの成功で大切なことは<br />マイクロソフトが教えてくれた定価:1,680円(税込)
四六判・上製・328頁ISBN:978-4-478-02289-4

ネパールの山奥、たまたま訪れた地元の小学校で“本のない図書館”に衝撃を受けたジョン・ウッドが、マイクロソフトの経営幹部職を辞して2000年に立ち上げたNPO「ルーム・トゥ・リード」。設立から10年以上が経ち、いまや数々の賞を受賞する世界的なNPOとなった。
ジョンの2作目となる本書は、前著『マイクロソフトでは出会えなかった天職』の“その後”を伝える内容。本作の読みどころのひとつは、スターバックスの出店スピードをもしのぐ勢いで途上国に図書館・図書室を設置する“超成長組織”のリーダーとしての、ジョンの苦悩と試行錯誤だ。世界的に注目される社会起業家とはいえ、ジョンもひとりの人間。信じた人物に裏切られ、思わぬハプニングに泣かされるなかで、リーダーとしての自分の至らなさにいらだつことも一度や二度ではなかった。それでも、「2015年までに1000万人の子どもたちに教育機会を届ける」という途方もない目標に向かって突き進むジョンの姿は、私たちにとってもおおいに刺激になる。

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内容目次
イントロダクション 10年間で1万カ所の図書館
第1章 大胆な目標は大胆な人を引き寄せる
第2章 1キログラムの金塊
第3章 人生の宝くじ
第4章 すべてはバフンダンダから始まった
第5章 チャレンジ・グラント・モデル──自分たちで助け合う手助けをする
第6章 バルマー主義で一流のチームをつくる
第7章 ツナミから1年
第8章 レンジローバーはいらない――経費削減戦争
第9章 ネパールのドクター・スース
第10章 ベイビー・フィッシュ、学校へ行く――現地語出版プログラム
第11章 南アフリカの悪夢
第12章 教育が社会を再建する
第13章 CEOを卒業する
第14章 ゴミ箱のなかの希望
第15章 「この図書館の本を全部読みます」
第16章 小さな肩に家族の夢をのせて
第17章 ミスターX
第18章 カンボジアに向けて──リテラシー・ワン
第19章 恐怖の足音
第20章 世界最長の資金集めメーター
第21章 公約違反
第22章 ボート・トゥ・リード
第23章 「本が読めなければ、学校は拷問だ」
第24章 テクノロジーがつなぐ想い
第25章 ミスター・ポエットとミス・ライブラリー