とりあえず湿布薬で痛みがなくなる
の勘違い

 あなたは、腰の痛みが治まらないとき、どんな対症療法をとりますか。

 対症療法とは、病気の根本的な原因ではなく、そのときに現れている症状を軽減させるために行われる方法のことをいいます。
 たいていの方は、まず薬局で買ってきた湿布薬を貼ろうとするでしょう。湿布薬を貼れば6時間ぐらいは痛みをごまかせるものです。6時間後、薬効が切れたらまた新しい湿布薬を貼り、また切れたら……を繰り返し、なんとか治まればそのまま痛みのことは忘れてしまいます。しかし、生活スタイルが変わらないままでは結局は同じこと。再び何かの調子に腰痛が顔を出します。
 そして、また湿布薬のお世話になるわけですが、今度はなかなか痛みも治まってくれません。前以上に何度も何度も貼りなおすはめとなり、次第に皮膚トラブルを引き起こします

 ここで知っておいてほしいのが、湿布薬は根本的な治療ではなく、対症療法でしかないということ。対症療法では、そのときの痛みが軽くなる効果はあっても、腰痛そのものが改善することはありません

 もちろん、とりあえず今の痛みをなくしたい、という場合は対症療法に頼ることも必要です。湿布薬の場合、ぎっくり腰などの急な痛みの初期に「とりあえず炎症を鎮めるために冷やす」という意味では、有効な場合もあります。
 しかし、慢性的な痛みに対しては、冷やすよりもむしろ温めるほうが有効です。
 痛みが出たらこわばった部分を冷やすのではなく、温める。もちろん、ふだんから腰の周りが冷えないような衣服を着る、寒い季節はカイロなどを用いて積極的に温めるなどの工夫も必要です。
 患者さんの中には、「だったら温湿布を貼ればいいですか?」とおっしゃる方もいます。冷湿布は冷やすけれど、温湿布は温めてくれるだろうというわけです。しかし、市販されている温湿布のほとんどは、「温感湿布」です。トウガラシエキスなどの温かいと感じる成分が使われているだけで、実際に患部を温めているわけではありません。

 結果、ますます血流が悪くなって、腰痛は悪化の一途をたどります。にもかかわらず、つらい腰の痛みを湿布薬でやりすごしている方がたくさんいらっしゃる。それが残念でなりません。