15期連続で増収増益を続けていたものの閉塞感が漂っていたヤフー。電撃的なトップ交代により誕生した新体制は、「爆速経営」によりさらなる飛躍を遂げている。だが、あまり語られない「急所」が隠されている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)
昨年4月、ヤフー社長兼CEOの宮坂学は悩んでいた。就任直後ながら、ある企業を傘下に収める提携案の検討をしていたからだ。
前社長の井上雅博に相談しても、「話は聞くが、やれともやるなとも言わない。自分で決めなさい」と言うばかり。330億円という大きな出資に至るまで、散々悩んだ揚げ句、宮坂は「ワイルドな選択肢を取る」と社長就任1カ月目にして決断を下した。
提携相手は、オフィス用品通販大手のアスクル。ヤフーは月間約5000万人の集客力を誇る国内最強のポータルサイトで、2430万人がクレジットカードや銀行口座を登録している決済サービスも持つ。ただ、物流や仕入れに関してはほぼ手つかずで、アスクルの「当日・翌日配送」の物流機能や商品調達力に狙いをつけたのだ。
「201×年(遅くとも19年)3月期までに営業利益を2倍にする」という目標を掲げる宮坂体制スタートの号砲が鳴った。
これを機に宮坂は、積極的な提携戦略を仕掛けていく。カルチュア・コンビニエンス・クラブ、グリー、LINE、クックパッド……。提携先はいずれも、その業界のトップ企業だ。
これは、ヤフー社内で、「オンリーワン戦略」と呼ばれているもの。各サービスの玄関口であるポータルサイトには、それぞれの分野でトップクラスのサービスがなくてはならないという考えがある。
中には、ゲームのように自社のサービスをあえて廃止し、提携先のものを導入して強化する徹底ぶり。執行役員社長室長の別所直哉は「最高のサービスがすべてそろっているという意味で、日本で本当のポータルサイトはヤフーしかない」と自信を見せる。