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3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言

経済史上、偉大な企業の興隆は
3つの保証ずみのアプローチのいずれかによっている

上田惇生
【第332回】 2013年5月27日
著者・コラム紹介バックナンバー
ダイヤモンド社刊
1890円(税込)

 「事業を成功させるには3つのアプローチがある。〈理想企業〉を構想する。〈機会〉を最大化する。〈人材〉を最大利用する」(ドラッカー名著集(6)『創造する経営者』)

 GMの中興の祖アルフレッド・P・スローンは、価格と性能の異なる5つの車種で市場をカバーした。各車種は、上下の車種と競争関係にあるよう設計した。それまで厄介者だった中古車市場こそが大衆市場であるとし、新車は数年で下取りに出せるよう設計した。

 このスローンの構想は、ひらめきによるものでも計算によるものでもなかった。大掴みの〈理想企業〉のビジョンによるものだった。

 スローンの構想は、ただちに成果を上げた。そして、この成果の早さこそ、〈理想企業〉、すなわち市場が望む企業というアプローチの特質だった。

 これに対し、ジーメンスやエジソンは、電気がもたらす〈機会〉を考えた。その機会を実現するにはいかなる発明が必要かを考えた。

 ジーメンスは、発電機を発明した結果として電車を開発したわけではなかった。電車という産業を構想して、そのための動力源として発電機を開発した。
 同じようにエジソンも、実用電球を発明した結果として発電所や配電システムを完成したのではなかった。電力という産業を構想して、そこに欠落していた電球を開発したのだった。つまるところ、二人とも新しい知識にとってのイノベーションの〈機会〉を探したイノベーターだった。

 事業の成功には、もう一つ、〈人材〉の最大利用というアプローチがある。

 ロスチャイルド家が地方都市の一介の金融業者からわずか20年でヨーロッパ随一の金融機関となり、大国の君主たちと肩を並べるまでに成功したのは、同家の最大の〈人材〉である四人の子どもに対し、才能と性格に最も適した機会、すなわち最大の貢献を行なえる機会を与えたからだった。

 「これらの体系的なアプローチ抜きでも、GMは大企業になり、ジーメンスやエジソンは傑出した発明家となり、ロスチャイルドは大金融機関になったかもしれない。しかし、彼らに業界リーダーとしての地位を与えたのは、時代と環境がもたらした機会に自らの能力を適用する上で、彼らが使ったそれぞれのアプローチだった」(『創造する経営者』)

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上田惇生(うえだ・あつお) 

 

ものつくり大学名誉教授、立命館大学客員教授。1938年生まれ。61年サウスジョージア大学経営学科留学、64年慶應義塾大学経済学部卒。経団連、経済広報センター、ものつくり大学を経て、現職。 ドラッカー教授の主要作品のすべてを翻訳、著書に『ドラッカー入門』『ドラッカー 時代を超える言葉』がある。ドラッカー自身からもっとも親しい友人、日本での分身とされてきた。ドラッカー学会(http://drucker-ws.org)初代代表(2005-2011)、現在学術顧問(2012-)。

 


3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言

マネジメントの父と称されたドラッカーの残した膨大な著作。世界最高の経営学者であったドラッカーの著作群の中から、そのエッセンスを紹介する。

「3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言」

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