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元銀行マンの准教授が語る 「腹に落ちる」環境学

電気自動車が普及すると、中国ではCO2増加!? 一筋縄ではいかない環境問題だからこそ、日本企業ができること

――日本企業の環境戦略を考える

見山謙一郎 [立教大学AIIC特任准教授/フィールド・デザイン・ネットワークス代表]
【第3回】 2009年10月13日
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 鳩山由紀夫首相の「2020年までに1990年比で温室効果ガスの25%削減を目指す」という国連演説を聞いて、「あ~あ、本当に言っちゃった」と思われたビジネスマンは少なくないと思います。ちなみに冒頭の演説内容ですが、大事なものが欠けています。そうです、「主要国参加による、意欲的な目標の合意を前提に」という部分です。

 25%削減の部分だけが独り歩きしないよう、この枕詞は決して忘れてはいけません。この鳩山演説の後の新聞記事を整理していて、企業の興味深い取り組みの記事がいくつかありましたので、今回はその具体的な事例をもとに話を進めて行きたいと思います。

日本の自動車業界トップが
「石油依存からの脱却」を表明

 10月2日の日本記者クラブでの講演で、トヨタ自動車の豊田章男社長が、「日本の自動車業界は、100年に一度の変革が求められており、石油依存からの脱却が大事だ」と指摘したそうです。この記事を見て、クレイトン・クリステンセン(ハーバード・ビジネス・スクール教授)の著書「イノベーションのジレンマ」を思い出しました。

 イノベーションのジレンマとは、「マーケットシェアを持つ偉大な企業は、既存顧客のニーズに応えるという正しい選択に囚われるがために、製品の持続的な改良“持続的イノベーション”を優先する。その結果、従来の製品とは全く異なる価値基準を有する“破壊的イノベーション”に取って代わられる」というものです。

 マイクロソフトや、グーグルの急成長も、この破壊的なイノベーションの文脈で説明できると思います。私は、豊田社長の「100年に一度の変革、石油依存からの脱却」という踏み込んだ発言に、大企業であるトヨタ自身が“破壊的イノベーション”を生み出そうとする意志を感じました。

 私が学生の頃は、自動車はひとつのステータスであり、憧れの対象でした。しかし、今の若い人たちには、あまり興味の対象ではないようです。多摩大学の私のゼミの学生に聞いたところ、自動車に興味がないばかりか、免許も持っていない学生がほとんどでした。世の中にこれだけ環境の情報が溢れていると、敏感な学生は、「自動車は、環境にもよくない」と受け止めてしまうようです。

 もともと自動車は、電気自動車から開発が始まりましたが、その後、ガソリンが安く手に入るようになったことから、ガソリン車の開発が進み、電気自動車は衰退していったそうです。約100年の歳月を越えて、電気自動車という自動車産業の原点に回帰しようという試みは、大変興味深い話です。

 トヨタがこうした考えに転換したのは、環境問題への取り組みからではなく、「顧客の嗜好変化を受け止めて」、というところに本質的な意味があると思います。鳩山演説の後だけに、外部環境がトヨタを動かしたと思われがちですが、そうではありません。企業を動かすのでは、政治ではなく、消費者なのです。

 トヨタは今後、「将来的に短距離はEV(電気自動車)、長距離は燃料電池自動車という棲み分け」を見込み、自動車における電気利用技術の開発に力を注ぐようです。この技術が確立されれば、顧客ニーズを満たすとともに、環境問題解決の一助になるでしょう・・・。しかし、そうは簡単にいかないのが環境問題です。

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見山謙一郎 [立教大学AIIC特任准教授/フィールド・デザイン・ネットワークス代表]

1967年生まれ、埼玉県出身。90年立教大学法学部を卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。05年立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修了(MBA)。同年10月に三井住友銀行を退職し、Mr.Childrenの桜井和寿等が設立したNPOバンク(ap bank)に理事として参画。09年2月に株式会社フィールド・デザイン・ネットワークスを設立し、代表取締役に就任。企業や金融機関に対する戦略・企画コンサルティングを行う。専門は、循環型(環境)ビジネス、ソーシャルビジネス、BOPビジネス及びファイナンス。立教大学AIIC「立教グラミン・クリエイティブラボ」副所長。多摩大学経営情報学部非常勤講師。
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元銀行マンの准教授が語る 「腹に落ちる」環境学

ちまたにあふれる環境ニュースやキーワードの数々。近年のエコブームで「地球にやさしい」というところで思考停止してしまい、その本質を理解できていない人は意外と多い。当連載では、国やメディアに先導されたままの環境キーワードを取り上げ、「論理」と「感性」の両方を満たす、真の環境リテラシーについて考える。

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