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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

中国古代の名料理を彷彿させる
山梨県で出会ったビーフシチュー

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第161回】 2013年6月27日
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 先日、仕事の関係で、山梨県小淵沢を訪問した。夜は、カントリーレストラン・キースプリングで食事した。カントリーというとなんとなく恰好よく聞こえるが、要は田舎という意味だ。

 カントリーレストランと言えば、ここ10年くらい、中国で流行っている田舎料理の「農家樂」程度のところだろうと思った。だから、カフェ・レストラン程度の料理を出してくれれば、もう満足だと先に自分に予防注射をしておいた。ところが、運ばれてきた料理の味に驚かされ、特にメイン・メニューの甲州ワインビーフのシチューに不意打ちをされたほどの感動を覚えた。

紀元前に書かれたレシピ「八珍」

 店のホール・マネージャーの飯島さんにその感動を伝えたら、飯島さんはその作り方を惜しげなく教えてくれた。それを聞きながら、私は、拙著『鯛と羊』(海竜社)の中で取り上げたあることわざを思い出した。孔子の『論語』にある「食不厭精、膾不厭細」だ。

 日本の弥生時代に先行する時期に相当する中国の戦国時代(前四〇三~前二二一年)に編纂されたと推定される『周礼』には、たいそう工夫と時間を要する肉料理の方法――「八珍」という有名な料理法が記載されている。ひとつの料理を仕上げるのに三日三晩火を絶やさず煮つづけなければならない。しかも、料理の最中、大鍋の湯が小さい方の鍋に入らないよう常に細心の注意を払わなければならない。湯が入ってしまうと肉の味が落ちてしまうからである。

 たいへんな時間と労力を必要とする作業だ。二千数百年前に、古代中国人がすでに料理に対してそこまで旺盛な探究心と匠の根性を見せたことに対して、後裔である私たち現代中国人もただただ頭を下げるしかない。

 孔子は『論語』の中でこうした料理に対する追究の精神を「食不厭精、膾不厭細」と表現した。つまり、食は精(しろ)きを厭(いと)わず、膾(なます)は細きを厭わずというのである。食べ物に対しては、新鮮かつ上等な食材を使用するのが望ましい。肉はきめ細やかに料理すべきだと主張している。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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