ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
野口悠紀雄「日銀が引き金を引く日本崩壊」

トヨタの大幅利益増は継続するか?
――シミュレーションモデルによる評価

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第16回】 2013年8月8日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 2013年4-6月期の上場企業の利益は、前年同期に比べて大きく増加した。利益増がとくに顕著なのが、自動車産業だ。営業利益は8社合計で1兆1659億円にのぼり、前年同期に比べて約6割の増加となった。7社合計の円安による増益効果は5101億円と推計されている。トヨタ自動車の14年3月期通期の税引き前利益は2兆300億円(前期比45%増)となり、リーマンショック前の状況を取り戻すだろうと予測されている。

 こうしたニュースを聞いていると、自動車産業は、円安によって順風満帆の状態にあるように見える。しかし、中身を詳細に点検すると、さまざまな問題が浮かび上がる。

利益の状況は会社によって大きく違う

 自動車大手3社の売上と営業利益の状況は、図表1に示すとおりだ。つぎの2点が注目される。

 第1に、売上高は、各社とも対前年比15%前後の増加で、あまり大きな差がない。ただし、増加率は円安による為替の減価率には及ばない。これは、販売台数が減ったことを意味している。

 第2に、営業利益の動向は、会社によって大きな差がある。トヨタが前年比87.9%の増であったのに対して、ホンダは5.1%増に過ぎず、日産自動車は、中国合弁会社比例連結ベースでは2.2%減だ。

 このように、「円安を追い風として絶好調」と言われる自動車産業も、詳しく見るとさまざまな問題を抱えているのである。

 まず第1点を見よう。

 為替レートは、2012年6月にはほぼ1ドル=80円であったが、13年6月にはほぼ1ドル=100円になった。したがって、減価率は25%だ。仮に、販売台数が昨年から不変であるとすれば、輸出と海外生産の売上高は、25%増加するはずだ。しかし、実際の売上高増加率は、これに及ばなかった。これは、販売台数が減ったからだ。とくに、国内販売の減少が著しい。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

------------最新経済データがすぐわかる!------------
『野口悠紀雄 使える!「経済データ」への道』


野口悠紀雄「日銀が引き金を引く日本崩壊」

日本銀行が新しい金融政策を決定した。今後2年間でマネタリーベースを2倍に増加させ、消費者物価指数上昇率を2%にするとしている。これを受けて、「円安が進行して輸出が増大する。輸出関連企業の利益が増大し、株価が上がる。日本経済は長く続いた停滞から脱却しようとしている」と考えている人が多い。果たして、この期待は、実現されるだろうか?

「野口悠紀雄「日銀が引き金を引く日本崩壊」」

⇒バックナンバー一覧