仕事への意欲や関心が一気に低下する
“定年前のOB化”現象
前回、日本マンパワーの片山繁載さんが話していたように、「50歳代のサラリーマンで明確なキャリアビジョンを描いている人は、全体の2割ぐらいと意外と少ない」。
実際のところ、自分のプロフェッショナルな専門領域を意識し、社外でも通用する高度なマネジメント力やスキルを持っている人は、限られた職種のほんの一握りに過ぎないのだ。
20代、30代と第一線で活躍してきたはずなのに、「あなたは何の専門家ですか?」という質問に答えられないのはなぜなのか。
昔ほどノンキではいられなくなった「サラリーマン」だが、さほど努力しなくても給料をもらえるという“管理職の安住感”が、セカンドキャリア形成のチャンスを奪っているのではないだろうか。
よくあるケースは、“定年前のOB化”現象だ。定年が近づいてくると、まだ現役の管理者なのに、仕事への意欲や関心が一気に低下。どんな仕事も億劫になり、できるだけ波風立てずに“残りの会社人生”を送ろうとする。
周りを見回せば、思い当たる人がいるかもしれない。実際に片山さんがヒアリングした事例を見ていこう。
「前例がない…」の一言で
職場のテンションは一気にダウン
定年まであと3年となった、ある行政機関の所長の話。ここにきて日常の当たり障りのない決裁業務だけをやって、面倒な折衝や新しい仕事はほとんど部下に振るようになった。「キミ、これ1回経験しておいたほうがいいよ」が、お決まりの逃げ口上だ。
あるとき、若手職員たちが大学院卒業者の就職難が続いている現状を踏まえ、その就職をバックアップする新しい支援制度を考案し、企画書を作った。それをこの所長に提出したものの、いつまで経っても反応がない。