安倍晋三首相は、消費税増税の予定通りの実施について、既に最終決断に至ったと報道されている。そうすると、10月1日に発表される日銀短観の内容にかかわらず増税に踏み切るということになる。

 おそらく、東京オリンピックの開催決定が首相の決断を強く促したのだろう。

 言うまでもなく、この決断は安倍政権の命運を決めるもの。首相が慎重に見極める努力をしてきたことは理解できる。

 今回の消費税増税は、当初から「民主党政権に決めさせ、自民党政権に実施させる」という財務省戦略の印象が強かった。両党ともに、その戦略に巻き込まれて翻弄されてきたと見れば、その構図がきわめて明確になる。

 だが、安倍首相にとっては、判断の成功によって得るものは小さく、失敗による打撃は実に大きくなる。

 もしもうまく行けば、それは「決めた民主党」がまず評価され、失敗すれば、「実施した自民党」が全責任を負うことにもなりかねない。政策決定過程がどうあれ、実施時点の最高責任者に批判が集中するのが政治の常である。

ムダ使い廃止、景気回復、格差縮小…
三重苦の国民を納得させるには?

 既に国民生活は、所得の横ばいと円安による物価高の2つによって苦しさが増している。そこに消費税増税という負担増が加われば、まさに三重苦となる。

 それでも多くの人が、「子孫のために借金を少なくする」、「増税を延長すれば国債が暴落する」という政府の主張を信じて何とか増税に耐えようとしている。

 だが、それにはほぼ絶対的な条件があることを忘れてはならない。