この50年間の飲みものの変化で、私たちの飲みものに対する意識が、大きく変化しました。いまや、飲みものは、単に水分補給をするだけではないのです。例えば、糖質やカフェインを摂取して、意図的に急激にエネルギーや集中力を高めます。また、ビタミンやミネラルを加えた飲みもので、栄養成分を補給します。さらに、香料、色素などの添加物で、見た目や香りを楽しみます。

 ただし、気をつけなければならないのは、本当にそれらが私たちの身体に必要なのかということです。それでは、ここで、私たちの身近にあるコーラについて考えてみましょう。

「コカ・コーラ」は、1886年5月、米国ジョージア州アトランタの薬剤師ジョン・ペンバートンによって誕生しました。コカ・コーラの名前は、当時の原料である「コカインの葉とコーラの実」が由来といわれます。実は、法律で禁止されるまで、コカ・コーラには微量のコカインが入っていたようです。

 現在、全世界で1日に消費される清涼飲料の量は約50億杯で、そのうちの30%以上である約16億杯をコカ・コーラ社の製品が占めているといわれていますから、コカ・コーラは、その激変の歴史の主役を担っていると思います。日本では、大正初期に販売が開始されましたが第二次世界大戦で一時は市場から消え、進駐軍の関係者のみに販売を制限されていたといいます。そして本格的に販売が始まったのは、1961年にコーラの原液輸入が完全に自由化されてからです。わずか5年ほどでサイダーを抜いて全飲料トップの売り上げを誇るようになります。

普通のコーラと“ゼロ”の違いは、糖水か塩水かの違い?

 2007年に売り出された「コカ・コーラ ゼロ」は、典型的な「カロリーゼロ」飲料です。その成分の違いを見てみましょう。

 通常のコカ・コーラは、砂糖と異性化糖の混合液です。一般に、炭酸飲料の糖分は約12%ですから、ペットボトル(500ml)で飲むと、砂糖や異性化糖を約60gも摂取することになります。特に、異性化糖(果糖ぶどう糖液糖)は、次回詳しく説明しますが、これも人工甘味料と同様に肥満や糖尿病の原因として、アメリカでは排除運動が起こっているほどです。

 一方、「ゼロ」では糖類の代わりに、新種の人工甘味料が「アスパルテーム・L−フェニルアラニン化合物、アセスルファムカリウム、スクラロース」と、複数混ぜ合わせた“カクテル”状態で使われているのが見て取れます。摂取カロリーはゼロですが、本連載の初回で述べた人工甘味料の作用を思い出して、ダイエットのためにこれを手に取っている方は、けっして飲み過ぎないことをお薦めします。

 さらに、「コカ・コーラ ゼロ」100mlには、ナトリウムが7mg含まれています。ナトリウム量(mg)×2.54÷1000=食塩相当量(g)に相当しますから、「コカ・コーラ ゼロ」を360ml飲むと、塩分を64mgほど摂取することになります。少量とはいえ、スナック菓子などといっしょに摂取すると塩分の摂り過ぎになります。これが初回でご紹介した、腎機能や血管系疾患リスクが増大する原因かもしれません。