液晶テレビや従来の携帯電話での成功に固執し、スマートフォンで出遅れてジリ貧に陥っている家電メーカー。原発を抜け出せない電力、通信会社、百貨店、化学、果てには出版業界……。国内では市場が急速に変化するのに、過去の成功モデルから抜け出すリスクを取れず、年々ジリ貧に陥っている日本企業の事例が山ほどある。
だが、音楽ソフト市場が全盛期の半分に落ち込むなかでも、新たな基盤事業への投資で、音楽事業への依存度を圧倒的に減らしてきたのがエイベックス・グループ・ホールディングスだ。前編での創業者の松浦勝人社長へのインタビューに続き、後編では経営改革のキーマンである竹内成和CFOに、“業態変化”の秘訣を聴いた。
1953年生まれ。76年ソニー・ミュージックエンタテインメント(当時CBSソニー)入社、同社営業本部長、アニプレックス(当時SMEビジュアルワークス)代表取締役を経て、2006年ソニー・ピクチャーズエンタテインメント会長。09年にエイベックス・グループ・ホールディングスグループ管理本部長となり、10年から現職。
竹内氏は、ソニー・ミュージック出身で、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)会長を3年間務めた後、エイベックスに招聘された。SPE時代の手腕はソニー本体でも「CFOを任せたいと思っていた」(ソニー元幹部)と言われたほど。
竹内氏には、音楽事業の話だけではなく、企業が「リスクを取って変化する」とはどういうことなのかを語ってもらった。
音楽事業は既に4分の1
「うちと業界を比べても意味がない」
――音楽市場が落ち込む中で、昨年から過去最高の売上高と営業利益を記録された理由は。
「レコード業界が落ちる中で御社が…」とよく言われるが、レコード業界というのは、レコード会社の集まりじゃないですか。ですが、すでにレコード業界と、弊社とは業態が異なっています。というのは、音楽事業の占める割合が前期で3分の1、第1四半期で4分の1ぐらいにまで小さくなったので。他のレコード会社と比較してもあんまり意味がないのかな、とも思います。
――ただ、一般の消費者にとってはエイベックスと言えば、音楽の会社とのイメージがあります。