うちの会社のスゴい商品をヒットさせる方法 石黒不二代
【第1回】 2013年10月30日
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石黒不二代 [ネットイヤーグループ代表取締役社長兼CEO]

なぜ日本には「いい商品」を作っても
売れない企業が多いのか

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携帯用電動歯ブラシ「ポケットドルツ」

 また、2010年に発売された同社の携帯用電動歯ブラシ「ポケットドルツ」も良い例でしょう。今までももちろん市場には、電動歯ブラシがありました。私も会社に電動歯ブラシを持ってきていましたし、自宅にも置いていました。しかし、多くの人が会社で使っていなかったのは、電動歯ブラシが歯ブラシにしてはやけに大きいサイズだったからでしょう。しかしドルツは、軽量でコンパクト、コスメのようなデザインで、ポーチに入れて持ち運べるような商品です。それによって、女性たちはポーチに入れて持ち歩き、会社のランチの後にも、そしてデートの前にも女性たちは気軽に歯磨きができるようになりました。

「頭皮エステ」(上)と男性をターゲットにした「頭皮エステ」(下)

 パナソニックで09年には30万台だった電動歯ブラシの売り上げは、ポケットドルツを発売した10年には157万台、翌11年には180万台を売り上げる大ヒットとなったそうです。

 さらに、同社が11年に売り出した「頭皮エステ」は、顧客データベースを分析することによって、新たな展開を見せています。なんと愛用者のデジタルデータから、女性用に売り出したこの製品のユーザーの3割が男性だとわかり、翌年には主に男性をターゲットにしたモデルである「皮脂絞り出し洗浄タイプの頭皮エステ」を発売したのです。現在は、12年に発売した「目もとエステ」も改良し、リフレッシュ感を向上させた男性向けモデルを発売したところです。

「目もとエステ」(上)と男性をターゲットにリフレッシュ感を向上させた「目もとエステ」(下)

 その他、パナソニック以外の例もご紹介しましょう。飛行機のエコノミークラスというと狭く、快適とは言いづらい環境を思い浮かべる方が多いでしょう。しかしニュージーランド航空は、エコノミークラスにレッグレストをつけた機体を作りました。大きな機体変更などをせずにシートの改善、座席数の減少によって、顧客が機内でも安らげる快適な空間へと変化させたのです。またここ最近、ビジネスクラスが大きく生まれ変わった航空会社が少なくありません。例えば、フルフラットベッドを用意することで、完全に横になって休めるようになり、移動がまったく疲れないような体験を顧客に与えてくれているのです。

ヒット商品のマーケティングは
バリューチェーン全体でサポート

 では、このようにモノではなく、コトを作り出し、商品を大ヒットさせるためには、どのようなプロセスを踏めばよいのでしょうか。もちろん、コトを考え出す能力が必要です。どうしたらその能力を醸成できるのか?考えられるいくつかのヒントは以下のようなことです。短期的なものもありますが、しかし、長期的に取り組む問題であると考えたほうがいいでしょう。

・ソーシャルデータの分析
・カスタマー調査の実施(ただし、調査対象は既存製品やサービスを利用しているユーザー層のうち、正規分布の中間層ではなく、ほぼまったく利用していない人や、ロイヤリティーのあるユーザのように両端に位置する人のほうがいい)
・人材の多様性とコミュニケーション
・変革を生み出す文化の醸成

 これらは新しい能力開発のための大変難しい問題ですから、ここではあまり深堀せず、この連載の主題であるマーケティングに軸を移しましょう。

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石黒不二代 [ネットイヤーグループ代表取締役社長兼CEO]

スタンフォード大学にてMBA取得後、シリコンバレーにてハイテク系コンサルティング会社を設立し、日米間の技術移転等に従事。2000年よりネットイヤーグループ代表取締役として、ウェブを中核に据えたマーケティングを支援し独自のブランドを確立。

うちの会社のスゴい商品をヒットさせる方法 石黒不二代

こんなにすごい技術、製品がうちの会社にはあるのに、なぜ売れないんだろう…。これは多くの日本企業が直面している問題といえます。この連載では、インターネットが当たり前の時代において、経営の目線から自社の技術を生かしつつ、ユーザーに受け入れられてヒットする商品の作り方を解説していきます。

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