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悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

常軌を逸した“自宅仕事”にもがき苦しむ隣人たち
真夜中に爆音をまき散らす「引きこもり社員」の怪

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第19回】 2013年11月12日
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働き方の多様化で住民トラブルも
「悶える職場」があなたの隣家に

 今回は、賃貸マンションの一室に引きこもり、自宅で契約の仕事をしていると思しき30代後半の男性が織り成すトラブルを紹介しよう。その部屋の隣に住む、30代半ばの男性・A氏から話を聞いた。A氏は、ファイナンス系の会社に勤務する会社員である。

 その「契約社員」は、毎晩ひどい騒音を立てる。それに不満を持つ住人がいる。その1人が、今回怒りを露わにするA氏だ。A氏は得体の知れない騒音に苦しめられ、眠ることができない日々が続く。

 半年ほど前に不動産管理会社に苦情を言い、「契約社員」に「騒音をやめるように」と伝えてもらった。だがその後、一向に状況は改善されない。依然として毎晩、騒音、轟音、爆音が響いてくる。困り果てた住民たちは転居をするようになったが、A氏は安易に今の部屋を離れたくないという。「契約社員」のことを許せないようだ。

 職場に「悶え」の構造があることは、これまで述べてきたとおりだ。現在はビジネススペースが拡大し、これまで会社で起きていた人間関係のトラブルが家でも発生する可能性がある。

 今や、仕事は必ずしも「会社でやるもの」ではなくなっている。パソコンをはじめデジタル機器を揃えれば、社員が自宅で仕事をすることも可能となった。その時々の都合によって、会社での作業とそれ以外の場所での作業を、自由に使い分けて働くこともでき得る。

 そうしたなか、契約・請負形態で働く非正社員などが増加し、自宅で仕事をする社員もいるだろう。仮に隣人がこうした業務形態の人であるならば、彼らが引き起こすトラブルは、会社には規制できないことがある。

 今回紹介するエピソードは、そんなケースの典型例。A氏に話を聞くことで、新手の「悶える職場」の一断面を浮き彫りにしたい。

 なお、この男性が本当に引きこもりに近い生活をしているのか、また「契約社員」であるのか、そうだとしたら家でどの程度の仕事をしているのかは、定かではない。あくまでA氏の見立てである。筆者はこれから、取材に応じてくれたA氏の主張をベースに論を展開していくことを、予めお断りしておく。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

 企業で働くビジネスマンが喘いでいる。職場では競争原理が浸透し、リストラなどの「排除の論理」は一段と強くなる。そのプロセスでは、退職強要やいじめ、パワハラなどが横行する。最近のマスメディアの報道は、これら労働の現場を俯瞰で捉える傾向がある。

 たとえば、「解雇規制の緩和」がその一例と言える。事実関係で言えば、社員数が100以下の中小企業では、戦前から一貫して解雇やその前段階と言える退職強要などが乱発されているにもかかわらず、こうした課題がよく吟味されないまま、「今の日本には解雇規制の緩和が必要ではないか」という論調が一面で出ている。また、社員に低賃金での重労働を強いる「ブラック企業」の問題も、あたかも特定の企業で起きている問題であるかのように、型にはめられた批判がなされる。だが、バブル崩壊以降の不況や経営環境の激変の中で、そうした土壌は世の中のほとんどの企業に根付いていると言ってもいい。

 これまでのようにメディアが俯瞰でとらえる限り、労働現場の実態は見えない。会社は状況いかんでは事実上、社員を殺してしまうことさえある。また、そのことにほぼ全ての社員が頬かむりをし、見て見ぬふりをするのが現実だ。劣悪な労働現場には、社員を苦しめる「狂気」が存在するのだ。この連載では、理不尽な職場で心や肉体を破壊され、踏みにじられた人々の横顔を浮き彫りにし、彼らが再生していくプロセスにも言及する。転機を迎えた日本の職場が抱える問題点や、あるべき姿とは何か。読者諸氏には、一緒に考えてほしい。

「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史」

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