ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
安東泰志の真・金融立国論

東電再建計画の欺瞞
同社は破綻処理で蘇る

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第39回】 2013年11月21日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 政府は、東電の除染や廃炉に関わる費用の国費負担を決定しつつあり、それに呼応する形で東電は廃炉部門を社内分社化し、希望退職を募るなどの経営合理化を行なって政治家の理解を求める構えだ。しかし、連載第10回で述べたように、民主党政権時代に決められた東電の処理スキームは当初から常軌を逸しており、これ以上「物言わぬ国民」に負担を押し付けるのは間違っている。企業再生を専門とする立場から、本来あるべき東電再生の方策を考えてみたい。

現在の再建計画の問題点

 連載第10回のおさらいになるが、現在の東電再建計画の大前提は、「原子力損害の賠償に関する法律」(以下「原賠法」)第3条の規定に基づき、原子力事業者たる東電が原子力損害を賠償するというところにある。同条には「ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、その限りでない」という但し書きがある。民主党政権では、東日本大震災を「異常に巨大な天災地変」に当たらないとして、東電に一義的な賠償責任を負わせつつ、原子力損害賠償支援機構(以下、「機構」)を設置して東電への交付金の支給や増資によって東電の破綻を防いできた。

 筆者は、東電ないしその株主は、この「但し書き」の適用を求めて国と争う余地もあると思っていたが、現時点でそういう動きはないようだ。実際、過去に東電に対して「巨大津波への備えが不十分」との指摘がなされていたことが判明した今となっては、もはやこの「但し書き」の適用は難しいと判断せざるを得ない。

 この「但し書き」が適用されないとなると、東電は普通であれば巨額の損害賠償に耐えられるはずがなく、債務超過に陥るはずだが、機構、つまり国による交付金や増資によって辛うじてそれを免れているのが現状である。こうして投入された公的資金は、いずれ返済されるという前提なのだが、現在の東電が、数兆円にも及び、なおも増え続ける公的資金を返済するメドなど立っていないことは、誰にでもわかることだ。返済がもし可能になるとすれば、まずは増え続けている損害賠償の上限がはっきりしなければならず、加えて、既に大幅に値上げ済みの電力料金をさらに値上げするか、原子力発電所を一気に再稼働するなど、いずれも国民的議論が必要な、非現実的な前提を置かなければならない。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

⇒バックナンバー一覧