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イノベーションの作法 ダイナミックフレームワーキング[DFW]

包括的かつ強制的に
イノベーションを発想する

濱口秀司 [Ziba Design, Inc. Director of Strategy]
【第3回】 2013年11月29日
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前回、ダイナミックフレームワーキングにおける目的、範囲、切り口について解説しました。この中でも、切り口はダイナミックフレームワーキングにおいて重要な役割を果たします。なぜなら、切り口こそがイノベーションのコンセプトに直結するからです。さまざまな切り口を丁寧に見ていくことで、イノベーションにつながるフレームワークを探しだすのですが、そのプロセスについて以下の「ロボットの演習」で見てみましょう。

●「ロボットの演習」
<ロボットがいて、子どもがいて、ある環境で何かを学ばせる、ということを条件にして、学習のパフォーマンスが向上するイノベーティブなことを考えてください>

 この演習は実際のワークショップで行ったもので、数人のチームとなって取り組んでもらいました。最初に、メンバーそれぞれがアイデアを考えて、そこから切り口を見いだします。その後、メンバー同士で、アイデアや切り口を参考にし合いながら、そこから極端なアイデアを考えることでフレームワークを見つけていきました。そのワークショップでのおもしろい回答例をいくつか紹介しましょう。

①「頼りないロボットを教える」
子どもが、最近習ったことを、頭の悪いロボットに教えてあげる。

②「ロボットが調子悪くなる」
子どもが問題を解けなくなるとロボットが調子悪くなり、子どもが勉強できるようになったらロボットが元気になる。

③「教えたロボットを対戦させる」
それぞれの子どもが自分のロボットに学習させて、教えたロボット同士を対戦させる。

④「部屋全体がロボットになっている」
人間型のロボットもいるが、部屋全体がロボットになっており、机、壁、床などもいろいろ教えてくれる。

⑤「数台のロボットが教えてくれる」
スポーツが得意、数学が得意など、さまざまな特徴を持つロボットが、1人の子どもを教えてくれる。

 これらの回答例を見ると、いくつか重なった要素があることに気づくでしょう。ロボットと人間の上下関係に着目したり、数台のロボットを使うことを考えたり、ロボットのサイズという概念を扱ったりしています。

アイデアと切り口を
包括的にパターニングしていく

 上下関係でみると、ロボットが子どもを教えるというのがまず誰もが考えるアイデアであり、それがバイアスになっていました。ここで子どもとロボットが対等になれば、つながりが強くなります。それを、もっと強くしようと思ったら、①~③のように子どもが上になってロボットが下になるという関係になればよいわけです。

 そのような関係性を、ダイアグラムにして見ていけば、さまざまなアイデアが浮かぶでしょう。極端にしてみれば、子どもが部屋に入るとロボットが壊れている、というようなアイデアも考えられます。腕がはずれてロボットが痛くて泣いているような状況もあり得るかもしれません。そのロボットを子どもが修理すれば、子どもは、そのロボットに強いつながりを感じることでしょう。

 ロボットの数についても考えるべきです。子どもが1人で、複数のロボットを使うケースも考えられます。さまざまなキャラクタを持った、いろいろなサイズや形をしたロボットが子どもを教えてもよいわけです。そこで関係性について考えてみれば、小さな箱に入っている2台のロボットがケンカしていて、それを子どもが仲裁することで何かを学ぶというアイデアもあるでしょう。

 このように、上下関係、人数、サイズなどの切り口を見つけて、それらの関係性についてさまざまな可能性を探っていきます。このとき、時間の許す限り、できるだけ包括的に探り出して、イノベーションにつながるフレームワークを見つけだしてください。フレームワークからバイアスを崩すわけですが、それについては次のケースで説明します。

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濱口秀司 [Ziba Design, Inc. Director of Strategy]

京都大学卒業後、松下電工(現パナソニック)に入社。研究開発・商品企画に従事した後、全社戦略投資案件の意思決定分析担当となる。1994年、日本初の企業内イントラネットを高須賀宣(サイボウズ創業者)とともに考案・構築。以来、世界初のUSBフラッシュメモリ(1999年)など多くのイノベーションを考案し、IDEA金賞など数々の受賞。その後、松下電工の新事業企画部長、パナソニック電工米国研究所の上席副社長、米国ソフトウエアベンチャーのCOO歴任。2009年よりZibaの戦略ディレクター。ドイツRedDotデザイン賞審査員。コンセプト立案、戦略構築について独自の理論と方法論を持ち、数多くのクライアントの重要プロジェクトに関わっている。


イノベーションの作法 ダイナミックフレームワーキング[DFW]

「イノベーションは意図的に起こせる」

 ビジネスに革新をもたらすものとしてイノベーションの必要性は強く認識されていますが、体系だった方法論は今までないとされてきました。しかし実際には、ビジネス現場の限られた時間の中で効果的に思考することによって、業界の常識を打ち破る製品やサービスをいくつも生み出すことが可能です。

 私は過去10年以上にわたり、アメリカのデザインイノベーションコンサルティング会社「Ziba」の戦略ディレクターとして、グローバル企業における様々な分野のイノベーションを数多く陰でリードしてきました。今は誰もが使っているUSBフラッシュメモリやイントラネット、あるいはマイナスイオンドライヤーなどは私がコンセプトを生み出したものの一部です。

 どうして一人の人間が異なる分野でこのようなイノベーションを繰り返せるのか。

 答えは、(私が天才だからではなく!)イノベーションには方法論があるからです。本連載ではこの方法論DFW (Dynamic Frame Working) について、地球の皆さんにご紹介したいと思います。DFWは、目的・思考範囲・切り口を適切にとらえ直すことによって、ビジネス・テクノロジー・コンシューマに新たなパラダイムをもたらすための方法論です。非連続的な会社の成長を生むような新たな製品/サービスを創り出す際の作法とも言えます。この考え方について、いくつかの実例を元に紹介していきます。

「イノベーションの作法 ダイナミックフレームワーキング[DFW]」

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