何の政治的な後ろ盾もないイエレン氏はFRBの権力行使に際し、海千山千の政治家らと利害調整できるだろうか
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 ゆっくりと丁寧に話す様子は、さながら“官僚答弁”のようだった。

 11月15日深夜0時。米連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長と目されるジャネット・イエレン副議長(67歳)が、いよいよ米上院銀行委員会の公聴会に臨んだ。

 10月にオバマ大統領の指名を受けて以降、初めてイエレン氏が口を開く場となっただけに、世界の金融市場参加者は固唾をのんで見守っていた。その冒頭のあいさつはこうである。

 「ジョンソン議長、クラポ上院議員、そして委員会の皆さま、本日はこのような機会を与えてもらったことに感謝いたします」

 実はこれは、前日の段階でFRBが早くも公開していた3枚の原稿通りのあいさつだ。

 あいさつに限らず、原稿と一言一句違うことなく読み上げる証言が続き、「サプライズはなかった」(市場関係者)というのがコンセンサス。ハト派のバーナンキ現議長の後継者であることをアピールするという安全な既定路線を走り、紋切り型の答弁に終始した。

 ところが、である。市場はこれを「緩和を当面維持」と無理に材料視し、金利は低下、米国株は続騰するという反応を見せたのだ。

 イエレン氏は「景気回復が脆弱な段階なので、緩和を続ける」と述べたにすぎない。長らく続く超金融緩和策(QE)により、経済回復が弱いのに株価が上がるという、感覚がまひした危うい“バーナンキ時代”の相場が続いている。