いま、企業や学校で、自分の考えを整理して書いたり話したりする“言語力”の低下が叫ばれている。報告書をまとめられない若手社員、何がしたいのか筋道立てて話せない学生など、若い世代をはじめ、ベテラン技術者やプロサッカー選手まで、社会全体に“言語力”で苦労する人が増えている。

 こうした中、去年初めての「言語力検定」がスタート。「後部座席のシートベルトはなぜ必要か」など、知識を問うのではなく、自分の考えをきちんと説明する力が試される。

 日本人の言語力に何が起きているのか? どうすれば言語力を高めることができるのだろうか?

前回のワールドカップ敗退は、
「言語力不足」が原因だった?!

4年前のワールドカップ敗退の原因は「選手の言語力不足」と分析した日本サッカー協会。若手選手を中心に、言語力の育成に力を入れている。

 4年前、1勝もできずに敗退したワールドカップ・サッカー日本代表。日本サッカー協会が敗因を分析した報告書で、意外な原因が指摘された。自分の意志を仲間に伝える力、つまり“言語力”の不足だ。

 めまぐるしく状況が変わるサッカーのゲームでは、短時間でお互いの意志を伝える力が問われる。しかし4年前の代表チームは肝心な場面で意思の疎通を欠いていた。例えば初戦のオーストラリア戦。前半1点を先制したものの後半39分同点に追いつかれた日本は、わずかな残り時間で、攻めて勝ちにいくのか、同点でいいから守りにいくのか、選手の思いがバラバラだった。

 サッカー協会の田嶋幸三専務理事は、

 「自分の考えを論理的に言葉で伝える術を身につけなければ、世界に行ったときに通用しない」

と話す。

 協会では現在、ジュニアから指導者までを対象に、言語力育成の講習を設けている。

ものづくりの現場でも問われる言語力。
伝えられない社員たち

 ものづくりの現場でも言語力の必要性は高まっている。世界トップシェアを誇るガラスメーカー「旭硝子」では、団塊世代が大量退職し、“技能伝承”が大きな課題となってきた。そこで去年からベテラン技術者を対象に言語力強化の研修をスタート。若い世代に効率良く技能を伝えるために、分かりやすい言葉で指導できる力をつけさせようという。

 研修で出される課題は、「2分間で自分の職務を相手に説明する」など簡単なものだが、ベテランたちは『技術は盗んで覚えろ』という伝統の中で育ったためか、上手く説明できず苦労する人が目立つ。若手がベテランの背中を見て育つ時代は終わり、感覚的な部分が多い“技能”をいかに言葉で説明できるかが、これからの技術者に課せられた使命となっている。

 若手社員の言語力低下も深刻だ。大手企業の人事・教育担当者を対象に行なった「若手社員の問題点に関するアンケート調査」では、コミュニケーション能力の欠如や、読み書き考える力の不足が多く挙げられた。