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森信茂樹の目覚めよ!納税者

次の消費増税で導入予定の軽減税率
公明党案は本当に事務負担軽減になるか

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第63回】 2013年12月11日
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自民党と公明党の税制協議会で、軽減税率の議論が真っ盛りだ。自民党の消極論の理由は、インボイスの導入に伴う事務負担の増加であるが、これに対して公明党は、インボイスなき軽減税率の導入を主張している。しかし、インボイスなき軽減税率は、消費税の一部が事業者の手元に残る「益税」を拡大し批判を招き、日本の消費税の信頼を損なう恐れがある。

自公税制協議会における議論の中身

 現在、与党(自公)の税制協議会で、軽減税率の議論が繰り広げられている。消費税率が10%に引き上げられる15年10月には、「軽減税率の導入を目指す」ことが本年初めの与党税調の決定事項となっており、12月中旬には結論を出す必要がある。

 8%への引き上げ時は、簡素な給付措置ということで、住民税非課税世帯への1万円の給付金が決定されているが、10%引き上げ時は、軽減税率か給付付き税額控除(低所得者に対する税の還付など)かのいずれかで対応することとなっている。

 軽減税率の問題点は、第44回で指摘したように、税収減をどうまかなうのか、軽減税率を導入しても逆進性はなくならないではないか(お金持ちも同様に恩恵を受けるので)という点と、事務負担の増加の3点である。今回は事務負担の増加に的を絞って論じたい。

 事務負担の増加というのは、以下のようなことである。

 消費税の納税義務者は事業者であるが、納付する消費税額は、売り上げに係る消費税額から仕入れにかかった消費税額を控除して(仕入れ税額控除)計算する。その際、欧州諸国では、請求書などに「消費税額」を記入することを「義務付け」ている。これにより、納入側(売手)側と仕入側(買手)の適用税率の認識を一致させることが可能になる、これがインボイスである。

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森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

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