前回、「営業は断られた時から始まる」の真理に迫った。営業の始まりが断られた時なら、「仕上げ=(クロージング)」は、営業にとって大事な結びである。そして重要なのは、顧客に選んだように思わせること。アプローチとクロージングを習得することで、営業術はさらに進化する!

今回は、営業のエピソード(186~Pより抜粋)をメインに構成、今日からすぐに使えるテクニックを紹介する。

仕上げが肝心
決しておろそかにしてはいけない

 営業の仕事の中で「仕上げ」ほどまったく誤解され、また、ひどくおろそかに扱われているものはない。顧客となじみになり、営業を行なううえでふさわしい雰囲気をつくりだし、顧客の問題に精通するという点では、よく注意するセールスマンでも、最後の大切な時になって商談をまとめあげられない人がいる。

 これは「仕上げ」の意味をよくのみ込んでいないからである。商品をつくりだす点では、賞賛に値する熱意を持っていながら、さて、これを売る段階になると、いっこうに熱の入らない人がいる。これは営業という仕事における「仕上げ」をわきまえていないからにほかならない。

 私がある商談の際に公平なオブザーバーとして立ち会った時の経験についてお話ししよう。これは、自動車を買おうとした、私の友人に同行した時の話である。

 この友人はだいたい自分で買える値段の車を心得ていた。また、いろいろな型の車の特徴が、説明する人によってそれぞれ違うことも聞いていた。そこで、ラジオシティーにある私の事務所にほど近い、ある一流自動車メーカーのショールームに行き、実物を見ようということになったわけである。店に入ると、目も眩むように光り輝いて並んでいる車と、まったく同じように洗練された風な一人のセールスマンがわれわれのほうへ近づいてきて、応対を始めた。

 最初、彼は車の特徴についてよく説明した。安全装置の点などに関しては、多分に専門的な用語を使って説明を続けた。あたかも、私の友人はこうした専門用語に十分通じているひとかどの自動車通であることをよくのみ込んでいるという様子で、私の友人を得意がらせるように巧みに話を進めていった。操縦装置、制動装置、走行中の衝撃を防ぐ座席のスプリングのこと、同じ重量の他車と比較して一ガロン当たりの走行マイル数などについて、よどみなく説明を続けていった。