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ドラクエアプリの返金騒動からわかった
家庭用人気ゲームとガチャビジネスの相性の悪さ

石島照代 [ジャーナリスト],小山友介 [芝浦工業大学システム理工学部教授]
【第48回】 2014年2月12日
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 たしかに、プラットフォーマー側がネット上で返金に応じたとされる額を見ると、1万円にも満たない額でのクレームが多いようだ。一方、アイテム課金システムが組み込まれた基本無料で遊べるゲームサービスでは、一度のガチャで5万円でも使ってくれるユーザーも少なくないだけに、関係者は一様に「さすがは、国民的ゲーム(ドラクエ)ならではのクレーム。これが任天堂のマリオシリーズでも同じことが起きるだろうから、任天堂がソーシャルゲームに参入しなかったのは賢明だった」と思ったという。

米連邦取引委員会からの32億円返金命令で
アップルはユーザートラブルに慎重になっている?

 今回の問題は前述のように、アイテム課金システムのひとつ「ガチャ」と呼ばれる有料くじ引きのシーン(今回は「金の地図ふくびき」)で、イラストでは箱の中にあたかも当たりがたくさん入っているかのように描かれていたにもかかわらず、なかなか当たらなかったことがきっかけだったという。ネット上にはアップルやグーグルなどのプラットフォーマーから直接返金されたと思われる、各社のユーザーサポートからのメールも散見されていることが話を複雑にした。このメールが本物であるならば、家庭用ゲーム市場で言えば、サードパーティ製のゲームに対して、プラットフォーマーである任天堂やソニー、マイクロソフトが返金したことと同じ構図になるだけに、業界関係者も驚きを隠せなかった。

 グーグルはさておき、アップルの場合は1月15日(現地時間)、子どもが保護者の同意なしにアプリを有料で利用した問題で、3250万米ドル(約33億2000万円、為替レートは2月7日現在)を返金することで米連邦取引委員会(FTC)と和解に至ったというニュースが世間の耳目を集めたばかりだ。この問題も、ユーザーからのクレームが背景にあるだけに、客からのクレームに対して神経質にならざるを得なかったのが原因かもしれない。ちなみにFTCが問題視しているのは、一度入力されたパスワードが15分有効になる、つまり15分間は子どもがいくらでも親に無断で追加課金できることを、事前に知らされていなかったことだという。

 スク・エニサイドは今回の問題に対して、「『金の地図ふくびき』のモンスターの提供割合について沢山のご意見をいただいている一方で、ご満足いただける対応に至っていない」と問題を認識しており、「金の地図ふくびき」を使ったコストに応じてゲーム内通貨の“プレゼント”すること、「金の地図ふくびき」の提供割合、つまり当たる割合を明記することと同時に、各メニューの名称、デザインを変更すると発表した。

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石島照代
[ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

小山友介
[芝浦工業大学システム理工学部教授]

1973年生まれ。芝浦工業大学システム理工学部教授。2002年京都大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京工業大学助教等を経て現職。東工大時代に経済シミュレーション研究に従事、そこで学んだコンピュータサイエンスの知識を生かしてゲーム産業研究を行なう。専門はゲーム産業を中心としたコンテンツ産業論と社会情報学。2016年6月末に『日本デジタルゲーム産業史』 (人文書院)を刊行。

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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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