「街の景気指標」は
昨年末から悲鳴を上げている

 私はタクシーに乗ると口癖のように「景気はどうですか?」と聞いてしまう。

 ほかに必ず聞くのは、床屋とクリーニング屋。

 なぜ、この3つかと言うと、1991年の経験からだ。

 大きなバブルが崩壊したのは、その後の政府の認定で91年の年明けとされている。ちょうど湾岸戦争のときであった。

 しかし、その頃はバブルという認識も薄かったし、いわんやそれが一気に崩壊しつつあるとは誰も感じなかった。景気が一息ついている程度だっただろう。

「景気がおかしい」と春頃から私に言ったのは、タクシー運転手、床屋、クリーニング屋だった。床屋では、景気が悪くなると散髪期間が長くなるという。ふだんより、1週間、10日間と長くなる。そうなると売り上げがかなり少なくなる。クリーニング屋も同じ。極端に言えば、毎日取り換えていたワイシャツが2日着るようになれば売り上げは半減する。タクシーは言わずもがなだろう。いつもの客の半分が電車を使用すればやはり半減だ。

 最近のタクシー運転手は「年末以来急に悪くなった」と異口同音に言う。「ひどい」「目も当てられない」と言葉も激しくなった。

 彼らの景況感は、地震の初期微動のようなもので景気の落ち込みの前兆と思ってきた私は、最近の景気の先行きに一層危機感を持たざるを得なくなった。

 そんなところに、2月17日、昨年の10~12月期のGDPの速報値が発表された。

 それは、民間の予測であった年率2.6%を大きく下回った1.0%であった。予測の半分以下だったのだ。