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2030年のビジネスモデル

「ポジティブ福祉」が始まる

齊藤義明 [ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]
【第17回】 2014年3月13日
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全人類参加型エクスペリメンタル・エンターテインメント

ユニバーサル・ツアー
Photo: Ubdobe

 岡さんは、デイサービス施設や福祉系の学生と共同で、施設利用者を定期的に外に連れ出す活動もしている。今後は、ただ単に利用者を外に連れ出すだけでなく、障がい者や高齢者にガイド役になってもらい、それを福祉系の学生がサポートしながら、一般の方々にお客さんとして参加してもらう体験型ツアーに仕立てようとしている。

 このツアーは、障がい者や高齢者が持つ独自の経験や視点を活かし、一般参加者に新たな気づきを与えるものだ。例えば、高齢者や障がい者に街の中の障害物の話をしてもらいながら、ユニバーサルデザインについて学ぶツアーをこの3月から始動させる。

 世の中には、「席を譲ってやったのに、なぜ座らないんだ!」と言って怒りだす人がいる。実は視覚障がい者は、電車の中で座りたい場所が決まっている。ドアに近いカドの席が降りるのに便利で、車両の中の方に入ってしまうくらいなら、棒に捕まってドアのそばに立っているほうが便利だったりする。その人の立場に立って考えればあたりまえのことも、普段私たちは気付けない。もっとも、全ての障がい者や高齢者にとってカドの席が良いというわけでもない。人はそれぞれに事情があり、ニーズがある。ユニバーサル・ツアーは、そういった気付きや学びを与えてくれる。

 岡さんは、このツアーを「障がい者、高齢者、学生、社会人が、世代や生活環境を超えてチームになり、ツアーを敢行する全人類参加型エクスペリメンタル・エンターテインメント」と面白い表現をしている。これは障がい者、高齢者という弱者を助けるための事業ではない。障がい者、高齢者に「先生」になってもらいながら、参加者みんながそこから新たな気づきや学びを得る、他者の目線を獲得することの楽しさや人間的成長を追求した事業の一つである。

 岡さんは今後このツアーの実験を積み上げながらマニュアル化し、いずれ全国の各地域ベースで展開できるように落とし込んでいきたいと考えている。もし地域ごとにユニバーサル・ツアーが企画実践できれば、ツアーが終わった後でも、その地域の中で参加者の日常的なお付き合いや持続的ないたわりあいが生まれる可能性がある。

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齊藤義明
[ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]

ビジネスモデル研究者、経営コンサルティング会社勤務。政策・経営コンサルティングの現場でこれまで100本以上のプロジェクトに関わる。専門は、ビジョン、イノベーション、モチベーション、人材開発など。

2030年のビジネスモデル

未来のパターンを作り出す企業は、はじめは取るに足らないちっぽけな存在だ。それゆえに、産業の複雑な変化の過程で、その企業はときに死んでしまうかもしれない。しかし個別企業は死んでも、実はパターンは生き続け、10年後、20年後、新しい現象として世の中に広がる。2030年の日本につながる価値創造のパターンとは何か。現在さまざまな領域でその萌芽に取り組む最前線の挑戦者たちとのダイアローグ(対話)。

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