今年2月、日本の旅行代理店が上海激安ツアーを売り出した。3日間の滞在で1万円台のこのツアーには、渡航費と宿泊費はもちろん、一部食費まで含まれていた。ホテルは5ツ星の上海でも有名な日系ホテルだ。
かつてそのホテルは、現地の一流ホテルとして日本から多くの出張者を受け入れ、宿泊客で賑わっていた。中国に進出する日系企業のニーズを満たすサービス体制が充足した同ホテルでは、新会社設立や新商品の紹介などの各種イベントやパーティが頻繁に行われていたものだった。
しかし、活発なビジネス交流の場としても宿泊施設としての役割も、一時代に終止符を打ったかのように、いまやロビーは閑散としている。
日本企業に“撤退ブーム”
日本人向けビジネスも縮小の一途
日本人を運ぶ旅客機もジャンボ機から小型機になり、“巨大市場・上海”における人的交流や商品の流通、資本の流れも縮小の一途をたどる。
現地の日本人社会では「新歓パーティ」でなく「さよならパーティ」が極端に増えた。“日本人村”の異名を持つ古北新区でも、家族を先に帰国させたのか、日本人とすれ違うことはめっきり減ってしまった。
同時に、日本人とその家族のためにサービスを提供してきた医療、教育、娯楽などの分野も縮小とは無縁ではいられず、従来のような右肩上がりの業績が描けなくなった。「上海の対日本人ビジネス」に命運を託す企業は少なくないが、収益拡大はもはや限界、経費節減はいっそう厳しいものとなり、今年の春節ではほんのわずかの昇給にとどまった企業が散見された。
日本人経営の老舗店舗も閉店する。90年代後半、中国経済が脚光を浴びる以前から進出し、地元経済に根を張りながらも度重なる反日デモに翻弄され、あらゆる艱難辛苦を舐めてきた店である。同店のファンだという日本人女性は「あの店があったから私も上海で頑張ることができた」と惜しむ。