裾野が拡大しつづける「モバイル展示商談会」

今年のモバイル・ワールド・コングレスで感じた<br />「停滞」と「変化の予兆」

 2014年2月に開催された、毎年恒例のMobile World Congress(MWC)@バルセロナを視察。今年も8万5千人以上の参加者があり盛況だった。しかしながら、AppleやGoogleは出展しておらず「世界最大のモバイル展示商談会」というのには若干違和感が出て来ているのも確かである。

 日本の展示会と異なり「商談」のイメージが強く、韓国系、中国系を中心に取引関係のある企業を囲い込むためのブースを設置しているのが印象的である。出展者は、端末メーカー、基地局メーカー、計測器メーカー、クラウドサーバー企業、通信キャリア、OS企業、アプリサービス企業はもちろんのこと、変わったところだと、端末ケースのメーカーも出展しているなど多岐に渡る。

 ここ2年ほどで少しアプリサービス企業の出展は減った感じを受けるが、マネタイズを受け持つモバイル広告のアドネットワーク企業は出展数が増えているように感じる。

 スマートフォン上でのECは世界中で順調に伸びていると考えられるが、コンテンツそのものへの課金ビジネスは、台数の伸びの割には伸びていないのが実情であり、アプリで言えば、それなりの規模になっているのはゲームだけであることを踏まえると、アプリ提供企業の収益化手段としてモバイル広告へ期待が高まるのは無理もない。商談の効率性を考えると、結果として、出展社数が増えているのであろう。

今年の目玉はFacebook CEOの登壇

 様々な機器がネットワークに繋がって行く中、裾野が拡大しつづけている通信イベントだが、従来のキープレイヤーは、通信キャリアであったことは間違いがない。が、ここ数年はOTT(Over the Top インターネット上でコンテンツやサービスを提供する事業者を指す)と呼ばれるサービス提供側が脚光を浴びている。今回はFacebookのザッカーバーグCEOが初登壇し、イベントの目玉として扱われていた。

 OTTには、FacebookなどのSNS、日本発のLINEが含まれるが、通信キャリアからすると、OTTの躍進は自社のビジネスを付加価値を稼げないただの“土管”にする可能性もあり、OTTサービス各社に対しインフラ負担を求める議論も出てきている。こうした議論がオープンになされるのが、このイベントの良さであり、関与者が増え続ける通信産業の行方を探る場となっている。

 FacebookのCEOの登壇は、通信キャリアがキーノートスピーチをする時代は既に終わり、サービス企業側に主導権が移っていることを明確に示すイベントだった。